About symptoms
About Mumps epididymitis
ポイントのまとめ
ムンプスウイルスによる精巣炎について
精巣は細菌感染症に強く、ほとんど細菌感染症は起こしません。起こしたとしてもそれは隣接する精巣上体炎からといった形が多いと思います。これ以外の原因は一応、先天性梅毒、淋菌、結核菌、外傷によるものなどがあります。
このため、メインはムンプスウイルスによる精巣炎になります。
ムンプスは流行性耳下腺炎のことで一般的に「おたふくかぜ」と言っているものです。
昔はムンプスのワクチンがあり、流行性耳下腺炎は少なかったのですが、ワクチン接種後の無菌性髄膜炎が問題となり、1993年以降、このワクチン接種が任意となっております。
このため、3~5年の周期で流行性耳下腺炎は流行を認める状態となっています。
ムンプスウイルスについて
ムンプスウイルスの自然宿主は人のみであり、感染経路は唾液からの飛沫感染がメインですが、尿による接触感染もあります。
ウイルスに感染しても約30%は症状がでない不顕性感染となります。しかし、年齢が高くなるにつれて症状が出る方が増えてきます。
潜伏期間は16~18日であり、耳下腺の腫脹が典型ですが、他にも髄膜炎、脳炎、膵炎、卵巣炎、乳腺炎など多彩な症状を来します。このうち泌尿器科と関連するのがムンプス精巣炎になります。
また小児には精巣炎は発症しにくく、成人男性で流行性耳下腺炎となると20~30%に精巣炎を合併します。精巣炎の発症は耳下腺腫脹から7日前後が多いです。しかし約30%で耳下腺の腫脹がない場合もあります。
症状
急激な精巣の疼痛と腫大などの局所症状と、発熱や全身倦怠感などの全身症状を認めます。
感染するのは片側の精巣が多いのですが、15~30%は両側性の精巣になります。
検査
検査としては問診、理学所見、検尿、エコー検査、採血を行うことが多いです。
問診としては本人及び近親者でも流行性耳下腺炎になっていないかの問診を行います。
理学所見としては精巣の圧痛、熱感がないかを確認します。またムンプス精巣炎は効率に精巣上体炎も合併するため注意が必要です。
エコー所見では痛い側の精巣の腫大および血流の増加を確認できます。
という形ですが、他の感染症として特異な所見が存在するわけではありません。
このため他の疾患がないのを確認するために検尿を行い、尿沈渣にて白血球が少なく、細菌感染症ではないこと確認したり、採血にて炎症所見を反映する白血球、CRP(C-reactive protein)の上昇がないこと、あっても軽度であることを確認したりします。
ムンプスウイルスの確定診断は精液尿からのムンプスウイルスの分離ですが、保険適応の問題もあり、推測する方法として、ムンプス抗体価(IgG、IgM)の陽性の有無を確認する方法が一般的と思われます。
治療
現時点で有効な抗ウイルス薬は存在していないため、対処療法メインとなります。
局所を冷やすこと、安静にすることで症状を少し軽減することができます。痛みについては鎮痛剤を投与します。細菌感染症の可能性を否定できない場合には抗生物質の追加も行います。
これによりだいたい1~2週で自然軽快します。
なった当初に忘れてはいけないことは、流行性耳下腺炎は他人にうつす可能性があるということです。痛みがあり受診する際に耳下腺が腫れていたら、「耳下腺の腫脹が消失するまで」が学校保健安全法で定められた学生での出席停止期間です。周りに迷惑をかけないためにも社会人でもこれに準じて休業をされた方がいいものと考えます。
症状が軽快してくる2週間程度してからも痛みが長引く方がおられたり、病巣となった精巣が萎縮したりすることがあります。
また片側のムンプス精巣炎では10%、両側では30%程度の方で不妊になる方がおられます。