About symptoms
About Bladder cancer
ポイントのまとめ
膀胱について
膀胱は尿を貯める袋状の臓器です。場所としては骨盤の中にあります。
男性は直腸の前方に、女性では子宮の前にある臓器です。
腎臓で作られた尿は尿管という管を通り膀胱に到達し、膀胱に貯められて、その後体外に排出されます。
腎臓、尿管、膀胱の解剖
男性の骨盤内の解剖
女性の骨盤内の解剖
膀胱癌とは
膀胱癌は文字通り膀胱内にできる癌です。
尿路は腎盂、尿管、膀胱、尿道とすべて尿路上皮という細胞で覆われています。このため、ここでできる癌は約90%、尿路上皮が癌になる尿路上皮癌です。
他にまれな扁平上皮がん、腺がん、小細胞がんなどの種類もあります。
膀胱癌の疫学について
膀胱癌は2016年の集計では男女合計で2.1人/10万人/年とあまり多くはない疾患ではあります。男女別でみると男性の方が約4倍膀胱癌になりやすいです。さらに1985年から2016年での変化でみると膀胱癌になる確率は1.4倍、死亡率は2.2倍に増加しています。
発症年齢は95%以上が45歳以上であり、80%が65歳以上と高齢者に多い癌です。
膀胱癌のリスクファクターについて
まず、膀胱癌の一番の危険因子は喫煙です。実に膀胱癌の5割は喫煙が原因と考えられています。ではここから具体的数値ですが、喫煙者と非喫煙者では膀胱癌になる率は2.58倍喫煙を吸う人で多くなります。特に現時点で喫煙している人で3.47倍膀胱癌になりやすくなります。以前に喫煙していた人で2.04倍高くなります。10年以上禁煙しているとリスクを2倍以下まで低下させることがやっとできるくらいです。
他の原因としては職業性のもの(特殊な薬剤を使用している職業)、ビルハイツ住血吸虫感染症、ヒトパピローマウイルス感染症、長期間の尿道カテーテル留置、シクロフォスファミド、骨盤への放射線照射も関与しています。
膀胱癌の遺伝について
膀胱癌が1親等内(兄弟、親子)でいる場合には一応、リスクは1.7倍になると言われています。
症状
膀胱癌の主な症状は、痛みもなにもないのにぱっとみて分かるくらいの血尿が出ることです。大体膀胱癌の人の7割の方がこれで見つかります。70歳以上で高度喫煙者の人では12.5%が肉眼的血尿の出た時点で膀胱癌の可能性があります。他には検診の腹部エコーでたまたまみつかる、検尿の顕微鏡的血尿で見つかるなどです。数値も載せておきます。血尿の方が3年以内に尿路上皮癌になるのは男性が7.4%で女性は3.4%です。膀胱癌の検出率は肉眼的血尿で17%、顕微鏡的血尿で4%とされています。なので血尿=癌ではありません。
どれだけ治療しても治らない尿路感染症や頑固な頻尿、排尿時痛などもひじょうにまれですが、膀胱癌が原因の可能性があります。
先の症状は膀胱癌の初期から認めますが、膀胱癌は癌ですので転移をします。転移はした部位に応じて症状がでます。例えば背骨に転移した場合には頑固な疼痛、場合によっては病的骨折を起こし麻痺を来すなどです。
膀胱癌の検査について
検査は問診からスタートして行きます。血尿の歴などを聞きます。
次に行っていく検査を書いていきます。
尿検査
検尿を提出してもらい、それを顕微鏡で確認し、血の細胞が多くないかを確認します。次に普通の尿路上皮細胞より形が崩れている異型細胞がないかを見ます。これを尿細胞診といいます。
また、尿中の腫瘍マーカーの有無も確認することもできます。尿中の腫瘍マーカーはNMP22とBTAを測定します。これらの検査のみでは癌の有無を確定できるわけではなく、癌があっても上昇しないこともありますし、癌がなくても上昇してしまうこともあります。
超音波検査(エコー検査)
まず腎臓から膀胱までエコーを見て明らかな病変がないかを確認します。
膀胱鏡(内視鏡検査)
内視鏡を尿道の出口から膀胱へ入れて、癌があるかどうか、癌がある場合、大きさや個数、形などを確認します。この検査は少し痛みがどうしてもある検査なのですが、腫瘍の有無を確認するためには必ず施行する検査です。
CT
膀胱内の局所をみること自体は少し弱いところはありますが、全身への転移の有無を検査するのに有用です。これによりリンパ節に転移がないか、肺や肝臓に転移がないかなどを確認します。
MRI
膀胱癌が膀胱の壁にどれだけ根をおろしているか(局所浸潤といいます)、大きさなどを確認します。
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)での組織採取による病理検査
これは手術ですが、先の検査は実は癌がある可能性が非常に強いというところまでで、この手術を行い、組織を採取確認し、確定診断をします。(病理検査といいます)もちろん目の前にある腫瘍は可能な限りすべて切除するので、治療と診断を同時にする形となります。後にもう少し詳しく書きます。
膀胱癌の病期分類
膀胱癌の分類には主に癌がどの場所にあるのかというTNM分類があります。TNMのTは腫瘍が膀胱の中でどれだけ膀胱の壁に根をおろしているか。(深達度)、Nはリンパ節転移があるかどうか、Mは遠隔転移があるかどうかです。これらを組み合わせてステージを決めます。
ここで重要になってくるのは筋層非浸潤癌か筋層浸潤癌かリンパ節転移や遠隔転移があるかです。ここでいう筋層について説明します。膀胱は膀胱の中から粘膜、筋層、漿膜という形で成り立っています。この2番目の筋肉の層まで癌が浸潤していると治療方針が変わってきます。
これについては次の治療方法で説明させてもらいます。
治療について
ここからは1筋層非浸潤性膀胱癌、2筋層浸潤性膀胱癌、3リンパ節など遠隔転移がある場合でお話させてもらいます。
まずは前提として、確定診断として先に出てきた経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)はすべての方に行います。
これについてまずは説明をします。
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)
これは先にも述べたとおり、治療と診断を同時に行います。通常は下半身麻酔(脊椎麻酔)を行い、尿道から膀胱鏡を入れ、この膀胱鏡の先にループメスをつけ、腫瘍を削り取る手術です。ここで、膀胱の壁に発赤という赤い部分がある場合には上皮内癌という膀胱粘膜の下を這う形の癌があることがあるので、この場合には膀胱の壁を一部取ってきて検査をする膀胱生検を追加します。
なおこの検査で先の筋層に浸潤しているかどうかについても確認を行います。
1筋層非浸潤性膀胱癌
この場合には、まずは手術としてはTURBTで一応終わりです。
しかし、病理結果で例えば、膀胱癌の数が複数個ある、癌細胞の顔つきが極端に崩れている、粘膜の下の方までは癌が根をおろしている、上皮内癌があるなどの場合には追加での治療が必要になる場合があります。例えば、上皮内癌や癌の個数が多い、癌細胞の顔つきが悪い場合には膀胱内注入療法が適応になります。これはBCG膀胱内注入療法があります。BCGはウシ型の弱毒化した結核菌です。これを膀胱内に入れる免疫療法です。また、粘膜の下まで癌が根を張っている場合には再度TURBTを行い筋層浸潤がないことをもう一度確認することがあります。なお癌が単発で顔つきがおとなしそうな場合にも膀胱内注入療法として抗がん剤を注入することがあります。
2筋層浸潤性膀胱癌
先のTURBTで筋層への浸潤が見つかった場合には、根治のための標準治療は膀胱全摘です。膀胱はもともと尿を貯める袋ですので、全摘後はこの袋を別に作る必要があります。これには尿禁制を保つ(自分で排尿する)新膀胱手術と尿禁制がない代用膀胱があります。
新膀胱は患者さんの腸を一部切り取り、膀胱の形に縫い直して、もとの膀胱の位置に接続する方法です。自分で尿ができるのは最大の長所ですが、癌の位置などにより適応とならないことも多いです。
代用膀胱は腸を一部切り出し、これに腎臓から膀胱につながる尿管をつないで、お腹にその腸を出して来る形です。この場合には勝手に尿が出てくるので、袋を出口に貼る形となります。回腸導管が代表的です。
他には腸を使わずに尿管をそのままお腹に出してきて袋を付ける手術があります。
3リンパ節など遠隔転移がある場合
この場合には局所の膀胱だけの治療では不十分になるために全身に効かせる治療を選択します。
これについては抗癌剤や免疫チェックポイント阻害薬を使用します。
また、それ以外でも例えば膀胱出血が止まらない、癌が骨に転移して痛みが強い場合には放射線治療を行うことがあります。
転移・再発
膀胱癌は血尿が出るため早期で見つかることが多いのですが、その後、40~60%で再発してしまいます。このため、早期癌の術後も定期的な膀胱鏡での再発の有無の確認が必要となります。
またこの過程で転移が見つかる場合には先の遠隔転移がある場合の治療を行うこととなります。