About symptoms
About Male infertility
ポイントのまとめ
不妊症とは
不妊症とは、生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間、避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、妊娠が成立しない場合をいいます。
ここでいう一定の期間とは1年というのが一般的です。
挙児を希望するカップルの15%が不妊と言われています。
不妊の割合
WHOの調査によると不妊症の原因は男性のみ24%、男女両方24%、女性のみ41%、不明11%と報告されています。
つまり、不妊症の約50%は男性が原因ということになります。
不妊治療の方法
一般不妊治療と生殖補助医療(Assisted Reproductive Technology :ART)があります。
これについては産婦人科さんで調べてもらったほうが詳しく出ていると思います。
一般不妊治療にはタイミング指導、卵巣刺激法、人工授精があります。
生殖補助医療には体外受精、顕微授精、男性不妊の手術があります。
男性不妊症の原因
造精機能障害、性機能障害、精路通過障害があります。
内訳は造精機能障害が83.4%、性機能障害13.5%、精路通過障害3.9%という報告があります。
造精機能障害は精子を作る過程の異常、性機能障害は勃起して射精に至るまでの異常、精路通過障害は精子の通り道の異常になります。
造精機能障害には突発性(原因不明ということです)、精索静脈瘤、染色体・遺伝子異常、薬剤性、停留精巣、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症などがあります。
性機能障害は性欲低下、性嫌悪症、勃起障害(erectile dysfunction:ED)、射精障害などがあります。
精路通過障害には先天性両側精管欠損症、尿道炎や外傷、射精管閉塞症、前立腺嚢胞、小児期両側鼡径ヘルニア術後などがあります。
そしてこの中で一番多いのは造精機能障害の突発性です。実に造精機能障害のうちの半数を占めています。
男性不妊症の検査について
問診、陰部所見、陰部超音波、精液検査、採血、必要に応じて染色体検査を行います。
問診
結婚してからの期間、挙児希望の期間、奥様の年齢、現在の奥様の不妊症での通院の有無などをお伺いします。
陰部所見
精巣の触診を行い、両側の精巣の大きさに左右差がないか、大きさが小さくないかを確認します、他に恥毛がしっかり生えているか、陰茎に異常がないかなども確認を行います。
陰部超音波
精巣の中に異常がないか、精索静脈瘤がないかを確認します。
精液検査
禁欲期間を2日以上5日以内設けた後に射精してもらい、精液を確認します。
精液所見の基準下限値は下の通りです。
精液量 | 精子濃度 | 運動率 | 総精子数 | 前進運動率 | 生存率 | 正常形態率 |
---|---|---|---|---|---|---|
1.4ml | 16×10⁶/ml | 42% | 3,900万 | 30% | 54% | 4% |
※WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen:Sixth edition 27 July 2021より
ここで述べているのはあくまで基準の下限です。これを下回る精液所見であれば妊娠の可能性は低くなります。
また精液検査の結果は個人でもかなりばらつきがあります。このため、一度異常が出ても2~3回は行うことが推奨されています。
ここで精液所見での言い方について説明を追加します。精子濃度と運動率で言い方が変わってきます。
先の基準で
またこのうちで精子濃度が極端に低い場合で精子濃度が500万/ml未満で高度乏精子症といい、遠心分離として精液に数匹のみ精子がみられる場合にはcryptozoospermia(不定型無精子症)といいます。
採血
採血項目としてLH、FSH、プロラクチン、総テストステロン、エストラジオールなどを測定します。
さてここでいう、LH、FSHというものについて説明が必要と思います。
精子が作られるのは精巣の中にある精細管という細い管です。精細管の中には、精子のもとになる精母細胞があり、これは精子細胞となります。この精子細胞が成熟して、精子となります。
この過程には、性ホルモンが大きく関わっています。性ホルモンの流れをつかさどっているのは、脳の視床下部と下垂体です。まず、視床下部からゴナドトロピン放出ホルモン(性腺刺激ホルモン放出ホルモン:GnRH)が分泌されて下垂体を刺激し、黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)を分泌されます。黄体化ホルモン(LH)による刺激を受けて、精巣では男性ホルモン(テストステロン)がつくられます。また、卵胞刺激ホルモン(FSH)は、男性ホルモン(テストステロン)とともに、精子の発生を促します。
このため、LH、FSHを調べることはこれらが少ない場合には治療方法になるということとなります。総テストステロンが低いこともFSHが低いことを推定する手段となります。またプロラクチンやエストラジオール(女性ホルモン)は量が多いと不妊の原因となります。
染色体検査
人間には細胞分裂の際に決まった設計図を46本持っています。これは染色体と言われています。23本が対になっています。この内22対は常染色体といい、残りの1対を性染色体といいます。これが性別を決定しており、女性はXXで構成され、男性はXYで構成されています。つまりY染色体の有無が男性を決定しています。
この染色体を検査することにより無精子症の原因となっていることが判明することがあります。
男性不妊症の治療
治療方針としては、挙児を得ることが最大の目的です。
まず精子数でみた、不妊治療の方針です。
重要なのはしっかり運動している精子の数になります。このため、検査の部分の精液検査の基準値での最低限としての運動率 42% 総精子数 3,900万が重要です。
これで最低限での総運動精子数は3,900万×0.42=1,638万ということとなります。
総運動精子数 | |
---|---|
900万~1,638万 | 人工授精 |
500万~900万 | 体外受精 |
500万未満 | 顕微授精 |
となります。このため、精子数をいかに増やすかが、治療方針の決定にも重要になります。
まずは生活習慣の改善です。
これについては
などに注意してください。
内科的治療法
突発性男性不妊症では漢方やビタミン製剤を組み合わせて治療をすることがあります。
他に低ゴナドトロピン性性腺機能低下症ではホルモンの補充を行ったり、抗エストロゲン剤の投与を行ったりします。
勃起機能障害ではED治療薬を使用します。
外科的治療法
精路通過障害に対する精路再建術
通り道の狭い場所を再開通する。
精索静脈瘤手術
別のページで解説をします。
無精子症に対する精巣内精子採取術(TESE)
顕微授精で必要になります。これは精子数が極端に少ない場合に、睾丸を直接切開し、精巣内部から精細管を採取し、ここより精子を回収する手段です。