About symptoms
About Stress urinary incontinence
ポイントのまとめ
尿失禁とは?
尿失禁とは自身の意思と関係なく尿がもれることをいいます。
この尿失禁ですが、細かく分類すると6つあります。腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、混合性尿失禁、夜尿症、持続性尿失禁、その他の尿失禁です。
腹圧性尿失禁の症状については下の症状の部位で書きます。切迫性尿失禁は急に来る尿意とともに尿が漏れてしまう症状です。混合性尿失禁は腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方がある方です。夜尿症は睡眠中に自分の意思に関係なく尿がもれる症状です。持続性尿失禁は常に尿が漏れる状態です。その他の尿失禁とは例えば性交中のみ漏れるとか特有の状況で起こるものをいいます。
症状
咳をしたとき、くしゃみをしたとき、運動をしたとき、重いものを持ち上げたときなどのおなかに力がかかった時に尿が漏れるというのが症状です。
どれくらいの方が腹圧性尿失禁なのか?
一般住民を対象とした調査で、40歳以上の女性の43.9%が尿失禁を経験し、その半分が腹圧性尿失禁と言われています。全成人女性の25%に腹圧性尿失禁を認めるといわれており、頻度の高い疾患です。
原因
膀胱の中に貯まった尿を漏れないように尿道自体が出口を閉めています。これに加え、咳等の不意な腹圧がかかると、尿道の周りの組織が圧迫され、さらに尿道が締まるという機能になっています。この出口を閉める力よりも膀胱の中の尿が出ていく力が強くなると尿が漏れます。
原因としては尿道の問題として、尿道粘膜の萎縮、手術による傷が尿道部にある、尿道にかかるように放射線治療を受けたことがあるなどがあげられます。
尿道周囲の支持組織の問題として、肥満、分娩出産による骨盤底組織がもろくなること、加齢により弱ること、女性ホルモンの低下によるものなどがあげられます。
検査
検査については、問診、台上診(内診)、尿検査、排尿日誌、尿流測定、残尿測定、採血検査、超音波検査、パッドテスト、膀胱鏡、鎖膀胱尿道造影があります。すべての検査を全部行うわけではなく、その時の状況に応じて組み合わせて行っていく形となります。一つずつ説明します。
問診
これについては尿失禁の項目でも述べた、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、その両方である混合性尿失禁であるかを鑑別するのに非常に有効です。
既往症として手術既往、放射線療法の有無、糖尿病、脊髄疾患、脳血管疾患、肺疾患、心疾患について聞きます。さらに分娩歴(経腟分娩かどうか、など)や婦人科疾患(子宮筋腫など)の有無についてもお伺いします。
台上診(内診)
状況により、婦人科のような内診台にて尿道カルンクルがないか、尿道狭窄がないかの外尿道口の異常、膣の発赤や萎縮がないか、骨盤臓器脱がないかを確認します。そのうえで必要であれば、Qチップテストを行います。これは尿が出る出口(外尿道口)から綿棒をいれ、腹圧をかけてもらいます。これで上向きに30度以上上がるようであれば、尿道が過剰に動いている尿道過可動と診断します。
尿検査
尿路感染症、尿路結石、膀胱癌、糖尿病などの疾患を鑑別するのに有用な検査です。
排尿日誌
排尿日誌は、ご自身でつけていただく尿の日記です。排尿した時刻とその時の排尿量を24時間自分で記録します。これを最低2日間、できれば3日間してもらいます。尿失禁があれば詳しい状況も記載してもらいます。(運動をしたときであるとか)これにより失禁の種類の鑑別に有用であるほか、治療の選択、効果をみるにも有効です。
尿流測定
トイレ型の検査機器に排尿すると、尿の出方がグラフで示され、尿の勢い、排尿量、排尿時間などが自動的に数値化されて表示されます。これで自覚的な尿の出が悪いのを実際の数値として客観情報として評価できます。
残尿測定
排尿直後に膀胱内にどれくらいの尿が残っているかを超音波で測定します。
採血検査
これは腎臓の機能を確認する目的で血清クレアチニンを測定することがあります。すべての方に行うわけではありません。
超音波検査
まずは、おなかにエコーの機械をあてて、膀胱の形が変に歪んでないか、膀胱に腫瘍はないか、膀胱結石がないか、尿がすごくたまっていないか(残尿、尿閉など)の確認をします。他に必要があれば背中にもエコーをあてて、腎臓が腫れてないか(水腎症)、結石がないかなどを確認することもあります。
パッドテスト
尿失禁の重症度を測る方法です。具体的にはまずは重さをはかったパッドをつけてもらい、水分500ccを15分以内で飲み終えます。その後、歩く、階段を上る、咳をする、立ったり座ったりするなどを合計1時間かけて行い、その後のパッドの重さを運動を行う前と比較します。2g未満は異常なしです。2g以上では尿失禁ありです。さらに10g以上になると重症と判断します。ただし、このテスト自体がその時の体調等にもかなり左右されるため、他のテストと複合して考えていく形となります。
膀胱鏡
おしっこの出口(外尿道口)より挿入するカメラです。これを挿入することにより、膀胱の中がどうなっているか実際に観察することができます。すべての方に行う検査ではなく、膀胱内に異常がありそうな場合に行う検査です。
鎖膀胱尿道造影
膀胱の中に細い管を入れ、レントゲンに映る特別な液体である造影剤を入れます。この際に尿道を見やすくする細い鎖を膀胱の中に入れます。この後、腹圧をかけながら撮影をして、尿道がどのような形になるのか観察をする方法です。これも必要がある方に行う検査になります。
治療
行動療法、薬物治療、手術療法があります。これらについて説明します。
行動療法
行動療法には生活指導と理学療法、膀胱訓練があり、メインと思います。
まずは生活指導です。一番効果があるのは減量です。体重を落とすことにより尿失禁が減るという報告は多数あります。他に激しい仕事や重いものを持つ職業の人に尿失禁のリスクがあるといわれていますが、これらを減らすことにより尿失禁の治療になるという報告はありません。禁煙についても喫煙で重度の尿失禁のリスクを増大させる報告や、喫煙者に尿失禁者が多いという報告はありますが、残念ながら禁煙により尿失禁が減るという証拠はありません。しかし、タバコは万病の元ですので、禁煙されるに越したことはありません。あとは便秘もトイレでいきんで排便することが後の尿失禁のリスクになりうることが報告されています。
理学療法でもっとも行われているのは骨盤底筋体操です。これは骨盤底筋を鍛えることにより尿失禁しそうになったときに、骨盤底筋が収縮し、これにより排尿を促す筋肉が反射的に収縮しなくなると考えられています。
膀胱訓練は、なるべく尿を我慢する訓練法です。全体として7割くらいの効果が報告されています。
薬物治療
腹圧性尿失禁としてはβ(ベータ)₂刺激薬であるクレンブテロールのみが保険適応です。
尿の出口の筋肉である、外尿道括約筋を収縮され漏れを減らすと考えられています。骨盤底筋体操と合わせて飲んでもらいます。さらには漢方薬でサポートすることもあります。
手術療法
手術は先の行動療法や薬物療法で効果が不十分であった場合に行います。
手術の種類は尿道を吊り上げることにより尿失禁を防止するTVT(tension-free vaginal tape)手術、TOT(transobturator tape)手術などが代表的です。
他には電気・磁気刺激療法があります。日本では電気刺激療法の干渉低周波が保険適応です。6割程度の改善の報告をしている論文があります。