About symptoms
About Renal cell carcinoma
ポイントのまとめ
腎臓について
腎臓は脊椎(背骨です)の両側の後腹膜腔という、腸が入っている腹膜の外にある空間にあります。成人では左腎が第11胸椎から第3腰椎の高さにあります。つまり結構体の上の方で、肺の下くらいにあたります。右腎は左腎より少し下にあります。
腎臓はそら豆状の形をしており、成人で長径が10cmくらいでイメージは握りこぶしを少しおおきくしたくらいです。重さは120~150gくらいです。
腎臓の機能は血液によって運ばれてきた体内の老廃物を濾過して、不必要なものを尿として排泄します。その他に血圧の調節、ビタミンDの活性化、造血ホルモンの生成などにも関わっています。
腎細胞癌について
腎臓に発生する癌は腎臓の中の尿細管の上皮細胞から発生すると考えられています。大きくなって血尿、お腹の痛みや腫れで見つかることもありますが、最近では人間ドックや癌検診などで行われている超音波検査や他の病気で行われたCTなどで偶然発見されることが多いです。腎細胞癌の細胞レベル(病理)での種類は淡明細胞癌が最も多く約70~85%を占めています。他に乳頭状癌、嫌色素性癌、紡錘細胞癌、集合管癌などの種類があります。
腎細胞癌の疫学について
腎細胞癌の2002年集計では10万人当たりの発症率は、男性が8.2人、女性が3.7人となっており、女性よりも男性の罹患者数が多いです。年代別の罹患率は70歳代前半が最も多く、50〜60歳代から増加していきます。また透析の方は透析でない方と比較して約15倍腎細胞癌になる可能性が高いです。
膀胱癌のリスクファクターについて
アメリカでの研究では肥満・喫煙・高血圧・腎疾患・ウイルス性肝炎が腎癌の発症リスクをあげたと報告されています。欧州の報告では男性における高度肥満、高血圧、高血糖とおよび女性のBMI高値が腎癌のリスクを上げると報告されています。
職業では有機溶媒、カドミウム、アスベストを使用する仕事が腎癌の危険因子と言われています。
透析の方は透析をされていない方より腎癌になりやすいことも報告されています。
面白いことにアルコールは腎癌の発症に対して予防的な効果があると言われています。かと言ってたくさん飲んでいいということではないので、節度を持って飲んでください。
腎細胞癌の遺伝について
von Hippel-Lindau(VHL)病とBirt-Hogg-Dube(BHD)症候群の2つが有名です。VHL病は約50%の人に腎細胞癌を認め、診断時の年齢の中央値は35歳です。BHD症候群では19.2%で腎臓の腫瘍性の病変を認め、41歳以上では34.8%で認めます。
症状
腎細胞癌の症状は、血尿、腫瘤、疼痛が3大症状と言われていました。血尿は腎細胞癌がおしっこの通り道まで進展すると認められます。腫瘤は腎細胞癌自体が大きくなり、腎臓の部位を触診すると触れることができます。疼痛は、腰背部痛や転移した場合には、頑固な疼痛を認めることがあります。進行すると発熱や貧血を認めることもあります。
最近は、検診やほかの疾患の検査中に偶然早期で見つかることが多く、この場合には症状はありません。
腎細胞癌の検査について
検査は問診からです。ここでは職業がんなどのリスク因子がないか、家族歴がないかなどをお伺いします。
次に、画像検査です、超音波、造影CT、MRIなどを行います。
超音波検査(エコー検査)
腎臓にある腫瘤をみます。小さいものはエコーでは判別困難の可能性があります。
エコー検査は体に負担をかけない簡便な検査ですので、最初にみるのには最適です。
造影CT
典型的な腎細胞癌は病理学的には淡明細胞癌で構成されています。この癌の場合には造影剤を点滴しながらCTを撮影すると、特徴的な画像が撮影でき、CTだけで、かなり癌の鑑別がつきます。もちろんCTだけでは判別が困難な場合もあります。
このため造影剤を使用したCTはほぼ全例で撮影をします。しかし、造影CTは腎機能の悪い方には腎機能を悪化させる可能性があるため、行うことができません。
MRI
造影CTが撮影困難である場合には、これで腎細胞癌を強く疑うかどうかの判断として撮影をすることとなります。
腎腫瘍針生検
ここまでの検査では実は癌を強く疑うところまでです。腎細胞癌の確定診断をするためには実際に組織を採取することが必要になります。この組織を病理検査に出して初めて診断が確定します。このために針生検を行うことがあります。ただし、通常は造影CTでの画像での典型像を認める場合には、針生検は省略して、診断と治療を兼ねて、手術を行うことがほとんどです。
針生検を行う場合は、①腎腫瘍が小さく、画像での判断が困難な場合、②腎臓の良性腫瘍を疑う場合、③アブレーション(腎の局所療法)治療の対象の方、④腎細胞癌以外が腎にできていると推定されるもの(例えば胃癌の転移など)、⑤腎臓を取る手術が困難で、その後の分子標的薬治療などで組織確認が必要な人が考えられます。
背中から腎腫瘍を直接針でさすため、侵襲が強い検査になります。
腎細胞癌の病期分類
腎細胞癌の分類には主に癌がどの場所にあるのかというTNM分類があります。TNMのTは腫瘍が腎臓自体の中でどれくらいの大きさなのか、その場所で他の臓器に浸潤してないかをみます。Nはリンパ節転移があるかどうか、Mは遠隔転移があるかどうかです。これらを組み合わせてステージを決めます。この転移の有無についてはCT、骨シンチなどの画像検査を追加して決定します。
治療について
腎細胞癌の治療についてなのですが、転移の有無が治療方針を大きく分けます。
基本的には転移がない場合には癌は腎臓だけ考え、腎臓を摘除します。
腎臓の摘除のしかたも最近はたくさん選択肢があります。
摘除する部位として腎癌が4cm以下の場合には腎臓をすべて摘除する必要はなく、癌の部分だけとる腎部分切除術を行うことが多いです。
ここより大きい場合には腎摘出術が基本となります。
手術の方法も開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術があります。大雑把に分けると10cmを超えるものは開腹手術を選択されることが多いです。ロボット支援手術は先の腎部分切除術に保険適応があります。それ以外が腹腔鏡といったところです。
また高齢者や合併症があり体が手術に耐えきれない場合に、大きさが小さいものに限り(おおむね3cm以下、5cmまでが限界と思います)経皮的局所療法が可能です。これは腎細胞癌に直接機械を刺して、これを中心として凍結壊死させる、もしくは焼灼する治療です。しかし、これらは標準治療ではありませんので、通常は腎部分切除が選択されます。
次は転移がある場合です。
基本的には転移がある場合には局所の腎臓だけでは治療が困難であるため、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬を使用します。腎細胞癌は実は通常の抗癌剤は効果が殆ど無いです。
しかし、体の調子がいい方は腎細胞癌のある腎臓をとる、転移部位が少なければ転移部位を切除するといったことをすると、予後を延長するというデータもあります。
このため、治療については、その人により決定をします。
癌が骨に転移して痛みが強い場合には放射線治療を行うことがあります。
転移・再発
腎細胞癌が画像上、腎臓にしかなく手術をした方でも再発をすることがあります。
再発は術後2年以内が一番多いです。このため、根治術後も定期的な画像、採血でのフォローが必要となります。
一箇所に再発するなど限定的な場合にはこれを切除するといったこともありますが、通常は免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬を使用します。痛みなどが出てくる場合には対処療法を行っていきます。