About symptoms
About renal pelvic cancer and ureteral cancer
ポイントのまとめ
腎盂・尿管について
まずは腎臓の位置の確認からです。腎臓は脊椎(背骨です)の両側の後腹膜腔という、腸が入っている腹膜の外にある空間にあります。成人では左腎が第11胸椎から第3腰椎の高さにあります。つまり結構体の上の方で、肺の下くらいにあたります。右腎は左腎より少し下にあります。この腎臓の中に腎臓で作られた尿が出てくる腎盂があります。ここから骨盤の中の膀胱まで尿管いう管が伸びています。尿管は全長が22~30cm、径は約5mm程度です。この尿管の中を通り尿は膀胱まで到達します。
この腎盂、尿管、膀胱は「尿路」と呼ばれ、その内腔は尿路上皮という粘膜で覆われています。この尿路上皮細胞に発生した癌を尿路上皮癌と呼び、その発生部位で腎盂癌、尿管癌、膀胱癌となっています。
腎盂癌・尿管癌とは
先にも書いた通り尿路は腎盂、尿管、膀胱、尿道とすべて尿路上皮という細胞で覆われています。このため、ここでできる癌は約90%、尿路上皮が癌になる尿路上皮癌です。他にまれな稀に扁平上皮癌,腺癌,小細胞癌,未分化癌などの種類もあります。
腎盂癌・尿管癌の疫学について
腎盂・尿管癌は膀胱癌比べて頻度が少なくなります。すべての尿路上皮腫瘍の約5%程度です。尿管癌の発生頻度は腎盂癌の約1/4とされています。腎盂癌・尿管癌は,50~70 歳代に多く認められ,男性のほうが女性より頻度が高く,2倍以上となっています。厚生労働省の調査にいると腎盂癌による死亡数は2002年781人に対し2006年1,200人、2010年1,558人と増加しています。尿管癌の死亡数も2002年852人に対し2006年1,105人、2010年1,593人で増加しています。
腎盂・尿管癌のリスクファクター
腎盂・尿管癌発症のリスクファクターで最も影響があるのは喫煙です。喫煙者は吸わない人と比べ3倍の腎盂・尿管癌の発症リスクがあり、長期間の喫煙者においてはそのリスクが7.2倍に増加すると報告されています。過去に喫煙歴を有する患者においても,吸わない人と比べ2倍のリスクを有するといわれている。
他には医薬品として、シクロホスファミドやフェナセチンの長期連用や濫用によって腎盂・尿管癌の発症リスクが上昇するといわれています。また、尿路結石や尿路閉塞に伴う慢性細菌性感染も腎盂・尿管癌発生のリスク因子と考えられています。最後に職業性の発癌としては、石油、木炭、アスファルト、タールなどの仕事に携わっている人は4~5倍の腎盂・尿管癌のリスクがあると言われています。
症状
腎盂・尿管癌の主な症状は、膀胱癌と同じで痛みもなにもないのにぱっとみて分かるくらいの血尿が出ることです。腎盂・尿管癌の人の75%以上の人に血尿は認めます。
他は他の疾患の精査をしている際に偶然見つかることが15%であります。
血尿以外の症状としては腫瘍からの出血が血の塊で尿管を塞いだり、腫瘍自体が尿管を塞いで尿管結石のときと同じ痛みを引き起こす事があります。この際には尿管や腎臓に出れなくなった尿や血液がたまり尿路が腫れる水腎症になることがあります。
腎盂・尿管癌の検査について
検査は問診からスタートして行きます。血尿の歴などを聞きます。
次に行っていく検査を書いていきます。
尿検査
検尿を提出してもらい、それを顕微鏡で確認し、血の細胞が多くないかを確認します。次に普通の尿路上皮細胞より形が崩れている異型細胞がないかを見ます。これを尿細胞診といいます。
超音波検査(エコー検査)
まず腎臓から膀胱までエコーを見て明らかな病変がないかを確認します。この際に腎臓が腫れている所見である水腎症がないか、腫瘍が映らないかを確認します。
CT
腫瘍をしっかりと映すために造影剤という血流のある部位を白く描出する薬剤を点滴しながらCTを取ることが多いです。これにより、腫瘍がある部分には血流があるので白く染まることがあり、これにより腫瘍があることを判断できることがあります。しかし、小さい腫瘍についてはCTだけでは判断が困難な事があります。
他にCTは全身への転移の有無を検査するのに有用です。これによりリンパ節に転移がないか、肺や肝臓に転移がないかなどを確認します。
膀胱鏡(内視鏡検査)
腎盂・尿管癌は膀胱癌を同時に認めることがあります。このために上部に腫瘍がある場合には膀胱癌の有無は必ず確認します。
内視鏡を尿道の出口から膀胱へ入れて、癌があるかどうか、癌がある場合、大きさや個数、形などを確認します。この検査は少し痛みがどうしてもある検査なのですが、膀胱癌の有無を確認するためには必ず施行する検査です。
ここまでの検査で上部尿路に腫瘍がありそうであるという診断になった場合には次の検査をしていきます。ここより先の検査は侵襲性が高いので、基本的には下半身麻酔が必要になります。
逆行性尿路造影、選択的尿細胞診
膀胱鏡にて尿管口という腎臓から膀胱へつながっている穴にカテーテルを挿入し、ここから造影剤を入れ、尿管と腎盂を映します。これにより、腫瘍がある部分を同定します。さらにこのときに尿を回収してきて、細胞診を確認します。こうすることにより右の腎臓からの尿、左の腎臓からの尿と選択的に尿細胞診を行うことができます。
尿管鏡検査
実際に尿管に入る細いカメラをいれ、腎盂まで確認をします。これにて腫瘍が見つかれば、組織の一部を取ってくる生検を行うことができます。しかし、血尿が強い場合には内部がカメラにて確認できないことも多いです。
腎盂・尿管癌の病期分類
腎盂・尿管癌の分類には主に癌がどの場所にあるのかというTNM分類があります。TNMのTは腫瘍が膀胱の中でどれだけ膀胱の壁に根をおろしているか。(深達度)、Nはリンパ節転移があるかどうか、Mは遠隔転移があるかどうかです。これらを組み合わせてステージを決めます。
腎盂癌、尿管癌は腎盂や尿管の壁自体が薄いため、見つかったときには進行癌が多いことも特徴の一つです。
治療について
治療方法については癌が発生したところ、つまり局所にとどまっている場合とリンパ節や肺などに遠隔転移を認める場合で違います。
まずは局所にとどまっている場合です。
この場合の標準治療は腎臓と尿管の全摘およびその尿管がつながっている膀胱の部分切除をする腎尿管全摘除術・膀胱部分切除術です。
この術式ですべての癌を取り除くのですが、これを行うと腎機能の低下は避けられません。このため、腎機能を温存する術式も考えられています。しかしあくまで標準治療ではなく、もともと単腎である、両側に癌がある、腎尿管全摘術に体調が悪く体力が持たないなど、腎機能温存、透析回避のために行われるものです。
方法は尿管鏡を用いてレーザーで腫瘍を切除する方法があります。下部の尿管癌に対しては尿管部分切除術および尿管膀胱新吻合術が行われます。これらの方法は腎温存は可能なのですが、再発してないかのフォローに再度尿管鏡が必要であり、フォローのたびに入院が必要になります。
次は転移を認める場合です。
この場合には局所の治療では治療ができないので、抗癌剤治療を行うこととなります。抗癌剤はGC療法(gemcitabine,cisplatin)やMVAC 療法(methotrexate,vinblastine,doxorubicin,cisplatin)が行われます。これで効果がない場合には免疫チェックポイント阻害薬での治療を行うこととなります。放射線治療については効果があるという論文とないという論文があり、現状の結論は出ていません。
転移・再発
腎盂尿管癌は手術して癌が取れたとしても再発がないか定期的に観察する必要があります。肺やリンパ節などに転移がないかをCTにてフォローします。また腎盂や尿管に癌がある場合に後に膀胱にも癌ができることがあります。このため、膀胱鏡および尿検査での尿細胞診を行います。膀胱に腫瘍を認めた場合には膀胱癌として対処します。再発が見つかった場合には、抗癌剤治療を行うこととなります。