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About Chronic prostatitis
ポイントのまとめ
前立腺って何?
前立腺は男性にしかない臓器です。
前立腺は膀胱のすぐ下に隣接しており、膀胱にためられた尿を排出するための通り道となる「尿道」の周囲を取り巻いています。大きさは栗の実やクルミ程度で、重さも15~20g程度と非常に小さな臓器です。
精液をためる器官である「精嚢(せいのう)」とも隣接しており、精嚢にためられた精液の通り道となる「射精管」は、前立腺のなかで尿道とつながっています。
前立腺の代表的な働きは生殖に関係することです。メインの役割として「前立腺液」の分泌があります。射精した際の白い液体であり、これが精液特有の栗の花のような臭いを出します。前立腺液は精液の主な成分のひとつで、精子を保護して活動を活発にする成分を含んでおり、精嚢の中で精子などと混合され精液となります。
前立腺炎の種類
前立腺炎の分類にはNIH(アメリカ国立衛生研究所)の分類が用いられることが多いです。
カテゴリー | 分類 | 特徴 | 尿所見 | 前立腺マッサージ前 | 前立腺マッサージ後 |
---|---|---|---|---|---|
Ⅰ | 急性細菌性前立腺炎 | 尿路感染症の急性症状 | 白血球 | +/- | + |
細菌 | +/- | + | |||
Ⅱ | 慢性細菌性前立腺炎 | 同一菌による再発性尿路感染症 | 白血球 | +/- | + |
細菌 | +/- | + | |||
Ⅲ | 慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群 | 主な症状として疼痛,排尿症状,および性機能障害 | |||
Ⅲa | 炎症性 | 白血球 | - | + | |
細菌 | - | - | |||
Ⅲb | 非炎症性 | 白血球 | - | - | |
細菌 | - | - | |||
Ⅳ | 無症候性炎症性前立腺炎 | 他の病態のための泌尿器学的評価 (例,前立腺生検,精液検査)中に偶然発見 |
白血球 | - | + |
細菌 | - | - |
※ +/-=陽性の場合あり +=陽性、-=陰性
このページではカテゴリーⅡ、Ⅲについて説明をしたいと思います。
症状
慢性前立腺炎はカテゴリーⅡ、Ⅲに属します。前立腺局所の細菌感染による慢性炎症疾患であるものとそれが証明できず、症状を認めるものです。
急性前立腺炎のような急激な発熱等の症状はなく、頻尿、残尿感、陰部痛、射精痛を認めます。
私の診療したことがある患者さんでは陰茎が時々痛む、股に必要以上に汗をかく感じがする、片方の下腹部が痛いなどの訴えをされている患者さんもおられました。
そしてこの症状は時期により軽くなるとき、ひどくなる時があります。
原因
カテゴリーⅡとⅢaについては細菌で生じている可能性があります。
これは急性前立腺炎が治りきらず慢性化したものと思われますが、大半の場合には先行する急性感染症が分かりません。
カテゴリーⅢbについては特に原因もなく症状を認めます。
好発年齢
カテゴリーⅡ、Ⅲともに性活動期の青壮年層に多いです。
検査
症状をお伺いして、本疾患を疑う場合には症状に応じて、検尿検査、尿培養検査、直腸診による前立腺マッサージ、前立腺マッサージ後の検尿と尿培養を行います。
また、他の疾患を疑う場合には適宜検査を追加し、他の疾患がないことを確認します。
検尿検査についてですが、泌尿器科でやる検査に尿沈渣があります。
これは顕微鏡にて、細菌を倒す白血球や実際に細菌がいないかを確認します。白血球が一定数(一視野あたり5個以上)認められれば、尿路感染症と診断します。
また、尿から実際にどのような細菌や真菌がいるのか同定する尿培養検査を追加することがあります。
原因となる可能性がある細菌はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が多く、他は大腸菌、クレブシエラ、緑膿菌などが原因となります。
直腸診とは肛門より指を入れ直腸越しに前立腺を触診する方法です。これにより、圧痛があるのか、熱感があるのかなどを確認します。
その後前立腺マッサージはここで前立腺をまんべんなく圧迫、前立腺液を尿道に向かって絞り出すようにします。
この後の検尿をみることにより、尿に細菌が出ていないか、細菌を倒す白血球が出ていないかを確認します。
また尿培養検査を提出し、検尿でいない細菌が出てこないかを確認します。
治療
治療は難渋することが多いです。
まず何らかの炎症所見を示唆できるカテゴリーⅡ、Ⅲaについては抗生剤治療を行います。
この場合には前立腺に効きやすいキノロン系、ST合剤、テトラサイクリン系、マクロライド系の抗生剤を使用します。
中途半端に治療を行うと容易に再発するため、最低2週間以上、1か月程度続ける必要があります。
これに症状に応じて、植物製剤(セルニルトン、エビプロスタット)や消炎鎮痛剤(ロキソニン)などを併用することがあります。
カテゴリーⅢbについては炎症所見がないため、さらに治療が難渋します。
まずは隠れている炎症がひょっとしたらあるかもしれないので、2週間程度、カテゴリーⅡ、Ⅲaでも使用する抗生剤を投与してみて症状の改善がないかを確認します。
場合によっては4週から6週治療を行いながら経過をみることもあります。
これに加え植物製剤や消炎鎮痛剤も使用することが多いです。ここにさらに排尿状態が悪い場合には尿道を広げる薬であるα(アルファ)遮断薬を併用したり、心に不安があるような方には抗不安薬を追加したり、漢方薬である猪苓湯や牛車腎気丸を併用することもあります。
この疾患は一生涯悪いものではないのですが、症状が軽いときとひどいときがあるため、よいときには少し経過をみることもあります。辛抱強く治療を継続することが必要です。
悪化を来す要因として飲酒、ドライブやデスクワークなどの長時間の座位、疲労、ストレス、冷えなどがあります。このため、生活指導としてはこれらを避けるように説明をします。