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About Cryptorchidism / non-palpable testis / mobile testis
ポイントのまとめ
精巣の生理的下降について
精巣は胎児期には腹腔内(お腹の中)にあります。これが、妊娠期が進むに連れ徐々に腹腔内→鼠径管(足のつけ根の下腹部の部分が鼠径部です)→陰嚢内に下降をしてきます。
この過程に異常が出てくるのが、停留精巣、非触知精巣、移動性精巣になります。
停留精巣になる方の頻度
停留精巣は新生児期で4.1%~6.9%であり、3ヶ月で1.0%~1.6%、1歳児で1.0%~1.7%となります。このように出生後3ヶ月以内で60~70%の子供が陰嚢内に精巣が自然下降します。
また、低出生体重児および早産の子供では停留精巣が多くなる傾向にあります。
停留精巣の分類と移動性精巣
精巣を皮膚から触知できるかという分類である、触知停留精巣と非触知停留精巣に分けられます。
頻度は各々、触知停留精巣が約80%、非触知停留精巣が20%となります。この非触知停留精巣のなかに精巣がなくなっているvanishing testisやおなかの中に残っている、腹腔内精巣や精巣自体がない無精巣症、鼠径管内精巣が含まれる形となります。
移動性精巣は陰嚢内から鼠径部、まれに腹腔内まで容易に移動する状態です。
症状
痛みは一切ありません。
しかし精巣が陰嚢内に下降せずに、その途中でとどまることにより不妊症への懸念があります。
他に精巣癌になる可能性や、脱腸である鼠径ヘルニア、精巣が正常な部位以外で固定されてしまうのでこれによる外傷の可能性、精巣の血管等がねじれてしまう精索捻転症といった疾患になる可能性や、子供自身が自分の精巣がないことが分かるようになったときに、自分が人と違うとか、性交渉の際に相手に指摘されるのではとか、正常に子供を得られるのかといった不安を感じる精神的なハンディキャップを抱える可能性があります。
検査
問診にて家族歴に停留精巣がないか、染色体異常、遺伝性疾患の有無が内科を聞き、妊娠中の異常、出生日数、出生体重を聞きます。
さらに新生児検診や乳児検診で精巣が触れていたかどうか、普段はふれているかどうかなどを聞きます。このことは移動性精巣でも非常に重要になってきます。
日常生活の中では特にお風呂で触れるかどうかが重要です。
次に実際に確認を行います。
精巣は緊張し寒くなると腹腔内に上がる(挙睾筋反射)があるので、なるべく落ち着けて、温めて診察を行います。
この時点で精巣が触れる触知精巣であれば、追加の検査は不要ですが、触れない場合には超音波検査やMRI検査が有用なことがあります。
治療
停留精巣の治療は自然下降が望める可能性が少なくなったら手術治療を行うのが通常です。
ではそれがいつになるのかですが、父性の獲得率については2歳までに手術を行うと90%、3~4歳までは50%、その後は30%と報告されており、このため、手術を行う時期は1歳前後から2歳までが望ましいとされています。
手術の方式は触知精巣では精巣固定術であり、これは文字通り停留した精巣を陰嚢内に固定する手術です。非触知停留精巣では手術も複雑となり、腹腔鏡で行う手術や、2回に分けて行うと行った手術もあります。
最後に移動性精巣の治療方針です。
移動性精巣は基本的には経過観察が一般的です。これは正常に精巣が発育すること、妊孕性に問題がないこと、思春期前には再び陰嚢内に固定されることが多いことが根拠です。
しかし停留精巣との鑑別が難しい、学年が進んでもほとんど挙上した状態で留まる場合には手術をするか相談になります。
また、まれですが、陰嚢より上に上がったまま戻らなくなる挙上精巣となることがあるので、定期的な受診をしておくことが無難です。