症状

About symptoms

精巣癌について

About Testicular cancer

ロゴ ポイントのまとめ

  • 精巣癌はそのほとんどが、精細胞の起源である未分化胚細胞からできます。
  • 精巣癌はセミノーマと非セミノーマに大きく大別されます。
  • セミノーマが明らかに予後良好です。
  • 非セミノーマの中には胎児性癌、絨毛癌、卵黄嚢腫瘍、奇形腫などがあります。
  • 精巣癌は全悪性腫瘍の1%と非常に稀な癌です。好発年齢は0~10歳、20~40歳、2峰性を示す癌です。
  • 精巣癌のリスクファクターは精巣癌の家族歴、停留精巣、反対側の精巣癌の既往、不妊症や精液所見異常などがあります。
  • 精巣癌の症状はよほど進行しないと症状はありません。痛みもなく精巣が腫れます。
  • 精巣癌の検査では問診および触診、超音波検査(陰嚢エコー)、MRI、採血、造影CT、骨シンチグラフィ、手術です。
  • ステージ分類にはTNM分類を使用します。
  • 他に分類としてセミノーマと非セミノーマ、腫瘍マーカーと転移部位とをあわせたIGCCC(International Germ Cell Classification)があります。
  • 治療方針はまずは手術にて精巣を摘除し、セミノーマ、非セミノーマを決定し、その後、精子内の血管や他の部位に遠隔転移がある場合には抗癌剤治療がメインとなります。
  • 精巣癌は2年以内の再発が多く、長期再発も少数に認めます。
  • 精巣癌は正しい治療を行えば治る可能性が高い癌です。
  • 挙児希望がある方には治療前に積極的に精子保存をすることが勧められます。

ロゴ 精巣について

精巣について説明させてもらいます。精巣は重さが約10g程度です。

精巣は皮膚まで色々な膜に包まれているのですが、精巣を直接包んでいるのが白膜です。これはかなり硬い膜です。この中に精巣の中身である、精巣小葉とよばれる構造が約250個程度あります。この小葉の中には更に精細管があり、この中にセルトリ細胞と精細胞の2種類の細胞があり、ここ以外の場所に男性ホルモンであるテストステロンの分泌に関与しているライディッヒ細胞があります。さて、精巣にて作られた精子は精巣上体、精管を通り前立腺に向かいます。この精管ですがお腹の中に入っている部位のあたりを鼠径管といいます。

精巣

ロゴ 精巣癌とは

精巣癌はそのほとんどが、精細胞の起源である未分化胚細胞からできます。

これらを胚細胞腫瘍といい、セミノーマと非セミノーマに大きく大別されます。これを大きく2つに分けるのは、セミノーマが明らかに予後良好だからです。非セミノーマの中には胎児性癌、絨毛癌、卵黄嚢腫瘍、奇形腫などがあります。これらについて、単一で構成される場合やセミノーマと奇形腫などが混じったものと言ったものがあります。

ロゴ 精巣癌の疫学について

精巣癌は全悪性腫瘍の1%と非常に稀な癌です。好発年齢は0~10歳、20~40歳、2峰性を示す癌です。年間死亡例は100例程度です。

癌としては単一成分ではセミノーマが約35%で一番多いのですが、複数の混じったものが40%と多いです。

ロゴ 精巣癌のリスクファクターについて

精巣癌のリスクファクターは色々と言われています。精巣癌の家族歴、停留精巣、反対側の精巣癌の既往、不妊症や精液所見異常などがあります。まずは精巣癌の家族歴についてですが父親に精巣癌があれば4倍、兄弟が精巣癌であれば8倍のリスクになります。
次に片方の精巣に精巣癌が出来た場合のもう一方にできる可能性は25倍という報告があります。

さらに停留精巣も危険因子と言われています。この確率については論文で色々と言われています。4.8倍のリスクになる、5~10倍のリスクになるなど幅があります。また停留精巣は手術の適応になるのですが、この時期が遅れるとリスクが高くなると言われています。
加えて、不妊症と診断されると2.4倍、精液検査にて異常がある不妊症の男性は20倍なりやすいという報告もあります。他にも出生前の母親の年齢、喫煙や出生体重、食事内容、高身長もリスクと言われています。

ロゴ 精巣癌の症状

精巣癌の症状はよほど進行しないと症状はありません。痛みもなく精巣が腫れます。石のように硬いです。ただ約10%に痛みを伴うことがあります。

この後、転移をするとその部位の症状が出ます。例えば肺に転移をすると咳が出るなどです。

ロゴ 精巣癌の検査について

検査では問診および触診、超音波検査(陰嚢エコー)、MRI、採血、造影CT、骨シンチグラフィ、手術です。ここで手術は治療ではと思うのですが、手術もすごく重要な検査になります。後ほど説明させてもらいます。

問診

初診の多くで陰嚢の腫大を主訴に受診されます。他には鑑別として精巣上体炎や陰嚢水腫があるので、痛みの有無や、発熱などについてお伺いします。続き触診にて陰嚢内に固く触れる腫瘍を確認します。

超音波検査(陰嚢エコー)

エコー検査は非常に有効で、痛みもなく直ぐにでき、悪性腫瘍を疑うには十分な所見が得られます。このため、まず行う検査になります。

MRI

MRIでも充実性の腫瘤および血管が非常に豊富であることが証明でき有用な検査になります。他には転移を調べる際に脳転移を疑うときには頭部MRIを行うことがあります。

採血

腫瘍マーカーを測定します。精巣癌の腫瘍マーカーはα-胎児性タンパク(alpha-fetoprotein:AFP)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(human chorionic gonadotropin:hCG)、乳酸脱水素酵素(lactic dehydrogenase:LDH)があります。精巣癌ではこれら3種類の腫瘍マーカーのうち1つか2つは約半数の症例で上昇しています。またこの腫瘍マーカーは癌治療後も再発の徴候になっていることがあります。

CT

CTを行う理由は転移の有無の確認です。この場合には腫瘍をしっかりと映すために造影剤という血流のある部位を白く描出する薬剤を点滴しながらCTを取ることが多いです。しかし、小さい腫瘍についてはCTだけでは判断が困難な事があります。CTを行うことにより肺転移、リンパ節転移などを確認します。この検査は精巣癌の場合には必ず行います。

骨シンチグラフィ

これは骨の転移が疑われる場合に施行します。

手術

精巣癌を強く疑う場合にも顕微鏡で実際に組織を見る組織検査を行わないと確定診断が出来ません。(病理検査といいます。)セミノーマかノンセミノーマか判断が困難です。このため、精巣癌では転移の有無にかかわらず、治療及び検査も含めて精巣摘出術を必ず行います。これは脊椎麻酔で行うことが多いです。



以上にて腫瘍の転移範囲および病理検査を行い、病期や治療方法を決めていきます。

ロゴ 精巣癌の病期分類

精巣癌の分類には主に癌がどの場所にあるのかというTNM分類があります。TNMのTは腫瘍が精巣の中でどれだけ広がっているのか。Nはリンパ節転移があるかどうか、Mは遠隔転移があるかどうかです。これらは他の腫瘍でもほぼ共通なのですが、精巣癌ではこれに加え腫瘍マーカーを加えます。これらを組み合わせてステージを決めます。

ロゴ 精巣癌のIGCCCについて

精巣癌にはIGCCC(International Germ Cell Classification)があります。
これは、1997年にInternational Germ Cell Cancer Collaborative Group(IGCCCG)から提唱された分類です。
以下に記載します。

Good prognosis
非セミノーマ セミノーマ
精巣または後腹膜原発で,肺以外の臓器転移を認めない。さらに,腫瘍マーカーが,以下の条件をみたす。すなわち,AFP<1000 ng/mL で,hCG<5000IU/L で,しかも,LDH<1.5 x 正常上限値である。
*5 年非再発率89%,5 年生存率92%
原発巣は問わないが,肺以外の臓器転移を認めない。さらに,腫瘍マーカーが,以下の条件をみたす。すなわち,AFP は正常範囲内であるが,hCG およびLDH に関しては問わない。
*5 年非再発率82%,5 年生存率86%
Intermediate prognosis
非セミノーマ セミノーマ
精巣または後腹膜原発で,肺以外の臓器転移を認めない。さらに,腫瘍マーカーが,以下の条件をみたす。すなわち,AFP≥1000 ng/mLで≤10000 ng/mL,または,hCG≥5000 IU/L で,≤50000 IU/L,または,LDH≥1.5 x 正常上限値で≤10 x 正常上限値である。
*5 年非再発率75%,5 年生存率80%
原発巣は問わないが,肺以外の臓器転移を認める。さらに,腫瘍マーカーが,以下の条件をみたす。すなわち,AFP は正常範囲内であるが,hCG およびLDH に関しては問わない。
*5 年非再発率67%,5 年生存率72%
Poor prognosis
非セミノーマ セミノーマ
縦隔原発,または肺以外の臓器転移を認めるか,あるいは腫瘍マーカーが,以下の条件をみたす。すなわち,AFP>10000 ng/mL,またはhCG>50000 IU/L,またはLDH>10 x 正常上限値である。
*5 年非再発率41%,5 年生存率48%
該当するものはない。

Poor prognosisについては1997年より現在では進歩をしており、全生存率は70~80%に増加しております。
ここで生存率を見てもらって気づいた方もおられると思いますが、精巣癌は治る可能性が高い癌です。このため、しっかりとした治療をしてもらいます。

ロゴ 治療について

まずは原発巣である精巣を摘除します。これは先にも書きましたが、転移の有無にかかわらず行います。これで精巣癌がどのような細胞でできているのかを見るためです。これは先に書きましたセミノーマもしくは非セミノーマでは治療方針が異なるためです。

ここで非常に重要なことなので繰り返しますが、精巣癌は正しい治療を行えば、治る可能性が高い癌です。

さて、まずは手術なのですが、高位精巣摘除術を行います。これは下腹部の切開を行い精巣と精索を切除、摘出します。これにより確定診断も付きます。

精巣腫瘍は先にも述べた通り、セミノーマと非セミノーマで治療方針が異なります。

セミノーマの治療です。早期では手術施行にてその後、経過を見ます。病理で少し進行している場合には抗癌剤(カルボプラチンなど)を追加で使用することがあります。

他に転移を認める場合にはその状態に応じて放射線療法および抗癌剤治療を行います。

さて、次に非セミノーマの場合ですが、早期で精巣内の血管の浸潤がない場合には経過観察をします。しかし、精巣内の血管などに少しでも浸潤がある場合には抗癌剤治療を追加します。

セミノーマ、非セミノーマでの抗癌剤治療はBEP(ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン)療法をメインとし、VIP(イホスファミド、シスプラチン、エトポシド)療法や、TIP(パクリタキセル、イホスファミド、シスプラチン)療法といったものがあります。

ロゴ 転移・再発

精巣癌は手術して癌が取れたとしても再発がないか定期的に観察する必要があります。肺やリンパ節などに転移がないかをCTと腫瘍マーカーにてフォローします。精巣癌の再発は治療後2年以内がほとんどです。ここで、精巣癌は長期再発も認めます。これらは精巣摘除術後5年以上の経過で認め、1~5%です。

再発が見つかった場合には、抗癌剤治療を行うこととなります。

ロゴ 精子保存について

精巣癌の治療は先の通り、手術、放射線、抗癌剤など多岐に渡ることがあります。また、治療されるのは若年の方も多く、挙児希望となることも多いため、積極的に精子保存はしたほうがいいと思われます。

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