症状

About symptoms

前立腺癌について

About Prostate cancer

ロゴ ポイントのまとめ

  • 前立腺癌に罹患する方は増加をしており、2020年~2024年似は男性癌で一番多くなると予想されています。
  • 前立腺癌には遺伝のリスクがあります。家族歴がある方は2.5倍から5.6倍罹患しやすくなると言われています。
  • 前立腺癌の検査にはスクリーニングとして採血でわかるPSAや直腸内触診、経直腸的超音波検査、前立腺MRI検査があります。
  • 前立腺癌の確定診断には前立腺針生検を行い、前立腺組織を採取します。
  • 前立腺癌の確定診断後にはステージング(前立腺以外で癌が転移していないかをみる)をCTと骨シンチグラフィーにて行うことが多いです。
  • 前立腺癌の病期分類はTNM分類とグリーソン分類を用い、予後分類として、さきの2つにPSAを加えて見ます。
  • 前立腺癌の治療は根治療法として手術療法、放射線治療があり、癌と付き合う治療としてホルモン療法があります。
  • 手術療法には開腹手術、内視鏡手術、ロボット支援下手術などがあります。
  • 放射線治療には外部照射療法、組織内照射療法、重粒子線治療などがあります。
  • ホルモン治療は一部の例外を除き、転移をしてしまっていて、局所治療が困難な場合や、高齢や健康状態が良くないなどの根治治療が困難である場合に選択されます。
  • ホルモン治療は男性ホルモンが前立腺癌に取り込まれないようにすることで前立腺癌細胞の増殖を抑制する治療法です。
  • ホルモン治療の方法として男性ホルモンの製造を抑える。前立腺癌が男性ホルモンの受け取る部位の邪魔をするという2つの方法があります。
  • 前立腺癌に対してホルモン治療の効果がなくなり、悪化するものが去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)です。

ロゴ 前立腺とは?

まずは前立腺の説明からさせてもらいます。前立腺は男性にしかない臓器です。

前立腺は膀胱のすぐ下に隣接しており、膀胱にためられた尿を排出するための通り道となる「尿道」の周囲を取り巻いています。大きさは栗の実やクルミ程度で、重さも15~20g程度と非常に小さな臓器です。

精液をためる器官である「精嚢(せいのう)」とも隣接しており、精嚢にためられた精液の通り道となる「射精管」は、前立腺のなかで尿道とつながっています。

前立腺とは?

前立腺の代表的な働きは生殖に関係することです。メインの役割として「前立腺液」の分泌があります。射精した際の白い液体であり、これが精液特有の栗の花のような臭いを出します。前立腺液は精液の主な成分のひとつで、精子を保護して活動を活発にする成分を含んでおり、精嚢の中で精子などと混合され精液となります。

前立腺はどのくらいの大きさなのでしょうか?一般的な成人男性での前立腺の大きさは、体積で表した場合には15~20ml程度といわれています。泌尿器科では正常の大きさを「クルミ大」といいます。ところが、前立腺が肥大すると、鶏(ニワトリ)卵大、鵞(ガチョウ)卵大、手拳大、小児頭大という表現になっていきます。

ロゴ 前立腺癌とは?

前立腺癌は男性ホルモンが関与している、60歳以上に多い高齢者の癌で、その頻度は人種差・地域差が大きく、欧米で高くアジアで低いのが特徴でした。しかし、人口の高齢化、生活習慣の変化などから、近年アジアでも増加しています。
前立腺癌の初期にはほとんど症状を認めません。しかし、良性の病気である前立腺肥大症を合併していることにより、尿の勢いが弱い、排尿後に尿が残った感じがする、夜間にトイレに起きるなど排尿に関係する症状を有することが多いです。さらに進行すれば、血尿や骨に転移して頑固な疼痛などが出てくることがあります。

ロゴ 前立腺癌の罹患率

前立腺癌に罹患する方の数は増えてきています。
1982年での報告は4362人でしたが、2012年では73145人です。これは2012年では男性癌の罹患率の第4位ですが、2020~2024年(年平均)には前立腺癌罹患数は105800人となり、男性癌のうち、第一番目の罹患数になると予測されています。
また、前立腺癌死亡数は、2020~2024年(年平均)には14700人となり、2000年の約1.8倍になると予測されています。
(大島 明ほか(編):かん・統計白書-2012, 篠原出版新社 参考)

ロゴ 遺伝について

前立腺癌のリスク因子には人種や食生活、加齢といったものがあります。
他に遺伝的な要因もあります。前立腺癌の家族歴が父親もしくは兄弟にある場合には2.5倍~5.6倍に癌になるリスクが高くなります。このうちでも前立腺癌に罹患した近親者の年齢が若ければ、その分、当事者の癌になるリスクが高くなると言われています。

ロゴ 検査

まずはスクリーニングの検査を行います。
これには採血にてみるPSA検査と直腸内触診、経直腸的超音波検査、前立腺MRIがあります。これらについてはまずはPSAでの高値であるかをみて、その後、他の検査を随時加えていく形になります。
そして確定診断を行うのに針生検を行うこととなります。
癌が確定した後にはステージング(癌の広がりをみる検査)を行います。

1つずつ説明します。

PSA(前立腺特異抗原:prostate specific antigen)検査

採血でみる検査でもっとも精度が高く、かんたんに行うことができる検査です。PSAは前立腺からのみ出ると言われている特徴的なタンパク質です。これは正常の方でも出ていますが、癌などの疾患があると正常より値が高くなります。
検診での目安ですが、まずは50歳を超えたくらいからPSAについて意識をしてください。
基準値としては50~64歳では3.0ng/ml以下を、64歳から69歳では3.5ng/ml以下を70歳以上では4.0ng/ml以下であれば、経過を見ていく形となります。
ここより高値であれば次の検査に移っていきます。

直腸内触診(DRE:digital rectal examination)

お尻から指を入れるとお腹側の方に直腸の壁越しに前立腺を触れることができます。直腸診にて前立腺の大きさ、硬さ、表面のなめらかさ、などを判定します。石のように硬いと癌の可能性が強いです。

経直腸的超音波(エコー)検査

これは少し痛みがあるかと思います。肛門からエコーの機械を入れ、前立腺を観察する方法です。ここで、癌を認める場合には周りより黒ずんで映ります。また形が歪になっていないかも確認します。

MRI検査

前立腺の内部を詳細にみるのに役に立ちます。より細かく見たい場合には造影剤を点滴しながら撮影をすることもあります。

針生検:確定診断の検査

先の検査までで癌を強く疑うもしくは、画像上の異常はないが、PSAが高値であり、癌の可能性をなるべく否定したい場合に前立腺の生検を行います。これはエコーで肛門から挿入するエコーで前立腺を確認しながら、実際に前立腺の組織を採取し、検査を行い、これにより癌の有無をみる確定診断となります。組織は針を刺すことで少量のものを採取します。
生検の方法は2種類あります。肛門と陰嚢の間の皮膚(会陰といいます)より針を刺し、前立腺の組織を採取する方法と、直腸から針を刺す方法です。前者は、発熱の危険はほとんどありませんが、麻酔が必要となるため、一般的には2~3日入院して行います。後者は、麻酔なしでできる検査で、痛みもほとんどなく、外来でもできますが、まれに出血や発熱が起こることがあり、緊急処置が必要なことがあります。
また、先のMRIを造影で撮影し、特別なプロトコールで撮影した場合には前立腺標的生検といい、MRIで癌が疑わしい部位を狙い撃ちすることができます。これについて興味や施行してみたいと思われましたら、施行施設も紹介しますので、ご相談ください。



次はステージング(前立腺以外で癌が転移していないかをみる)です

CT検査

全身への転移の有無を検査するのに有用です。これによりリンパ節に転移がないか、肺や肝臓に転移がないかなどを確認します。

骨シンチグラフィー

骨シンチグラフィーは、放射性物質ががんの転移のある骨に集まる性質を利用した検査です。放射性物質を静脈注射し、撮影を行うと、癌の骨転移を疑う部位について描出することができます。

ロゴ 前立腺癌の病期分類

前立腺癌の分類には主に癌がどの場所にあるのかというTNM分類と癌の細胞組織がどの程度正常よりかけ離れているかをみるグリーソン分類があります。この2つとPSAの値を合わせて予後の評価を行います。

TNM分類は癌がどの部位にあるかを見ます。
Tは前立腺癌が前立腺内にどのような形でいるのかNはリンパ節転移があるのか、Mは遠隔転移があるのかを見ています。
例えば、前立腺を飛び出し膀胱に浸潤して、リンパ節転移を認め、骨転移がある場合にはT4N1M1bとなります。

グリーソン分類は癌の悪性度(正常の組織からどれだけかけ離れているか)を1~5で表します。
1はほぼ正常で、5が最も顔つきが悪くなります。これを1番大きい面積の部位と2番目に大きい面積の部位で数値をつけます。
例えば、1番面積の大きい部位がグリーソン4で2番目が3であった場合にはグリーソンスコア4+3で7と表されます。

ロゴ 治療

治療の大きな柱は手術療法、放射線療法、ホルモン療法です。まずはこの3つについて説明をします。
まず、癌が局所(前立腺内)にとどまる場合には根治治療を選択することができます。この場合に選択となるのが手術療法と放射線治療です。ホルモン療法は癌と付き合うというイメージになります。

ホルモン療法

順序は逆になるのですが、まずはホルモン療法から説明します。この治療は、主に、転移をしてしまっていて、局所治療が困難な場合や、高齢や健康状態が良くないなどの根治治療が困難である場合に選択されます。前立腺癌は男性ホルモン感受性腫瘍です。このため、男性ホルモンが前立腺癌に取り込まれないようにすることで前立腺癌細胞の増殖を抑制することができます。このためには、男性ホルモンの製造を抑える。前立腺癌が男性ホルモンの受け取る部位の邪魔をするという2つの戦略があります。男性ホルモンは大部分が精巣で作られ、一部が副腎で作られています。このため、単純な手段としては両側の精巣を摘除する去勢術も非常に有効な手段ですが、最近では頭部から精巣に男性ホルモンを作りなさいというホルモンが出ているのですが、これを抑制する薬を使用することが多いと思います。これはLH-RHアゴニストやLH-RHアンタゴニストという製剤で皮下注射になります。こうすることにより男性ホルモンをなくしてしまいます。また男性ホルモンが前立腺癌に取り込まれる部位に先にはまり受け取れなくしてしまう薬もあります。これらは抗男性ホルモン剤と言われ内服薬です。
副作用として、女性化乳房、ほてり、性欲の低下、勃起障害、肝機能障害などがあらわれることがあります。

手術療法

手術療法は前立腺内に癌がとどまっている際に根治を目指す治療法です。やり方は開腹、腹腔鏡手術、ロボット支援下手術などがあります。
手術の時間は3~4時間程度でおよそ2週間程度の入院が必要となります。
手術の方式別では、腹腔鏡やロボット支援下手術は出血量が少なく、創部も小さいため、回復も早いと言われています。
前立腺全摘除術の手術時には、尿漏れを防ぐ尿道括約筋や勃起に関係する神経を傷つけることがあるため、尿漏れや勃起障害といった合併症が起こる場合もあります。

放射線治療

放射線治療も癌を治すために治療です。これもやり方が外部照射療法、組織内照射療法、重粒子線治療といったものがあります。一部、前立腺癌の病期分類で少し悪そうな場合にはホルモン療法と併用を行うことがあります。外部照射療法は通院での治療が可能ですが、平日ほぼ毎日1ヶ月半程度の通院が必要になります。組織内照射は前立腺に放射線の出る小線源を埋め込みます。これは3~4日程度の入院が必要になります。内部だけでの放射線治療になるので先の外照射より合併症が少ないと言われています。重粒子線はX線と比較して癌に対して集中的に照射でき、効果も高い、短い期間で治療できるというメリットがあります。
副作用として、直腸粘膜の潰瘍や出血、膀胱、尿道への影響、勃起障害などが起こる可能性があります。

PSA監視療法

他の治療法としてPSA監視療法があります。
これは癌の悪性度が非常に低く、さらに癌の広がりも前立腺内に非常に限局的である場合に癌の状態を注意深く見ていき、癌の悪性度が高くなったらすぐに次の治療を受けてもらう方法です。

ロゴ 去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)について

先のホルモン治療がずっと効いていてくれればいいのですが、これが効かなくなり、前立腺癌の状態が悪化していくことがあります。これが去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)です。この状態になると通常のホルモン治療は効果が乏しくなるため、新規ホルモン治療薬や抗がん剤による治療を選択することとなります。これらの治療も困難になってきた場合には、症状に応じて治療を選択する緩和治療を行っていきます。

Web予約
お問い合わせ
ホームページAI相談窓口