Director's blog
2021年9月20日
今回は泌尿器科手術の歴史シリーズの4です。ここまでヒポクラテスが致死的として腹部からの膀胱の手術を禁止されていることは説明してきました。また、実際に腹部切開の手術は感染症をおこして亡くなる方も多かったようです。(ちなみに手術前の手洗いが感染予防になると発見されたのは19世紀の半ばです。)
その後、1514年にValsalvaが恥骨の上から直接膀胱を穿刺することに成功しました。この後の検証にてもこの方法で膀胱穿刺を行うと、内臓や腹膜には一切損傷を来さないことを証明し、膀胱は腹膜の外にあるものだと認識され始めます。
1719年にいたり、Douglasは腹部からの結石治療を意図して高位切石術(腹部から切除して膀胱を切除し結石を取り出す手術です)を成功させました。1722年にCheseldenはこの手術を積極的に行い、手術書にも記載をしております。このような形で色々な変化を加え19世紀の終わりには現在の手術の形が完成し、合併症の多かった結石での経会陰式の手術はなくなっていきました。
これら膀胱の手術の成功は、その膀胱の先にある前立腺の手術へと進んで行きます。膀胱切開による膀胱結石手術が盛んになると、その際に見える前立腺肥大が気になりだし、ここを切除する人が現れました。ここを切除することにより、術後に排尿状態が良くなると噂がたち、これにより排尿障害を治療する目的で前立腺を膀胱内部から切除していくようになります。ここより数多の苦労を得て、前立腺肥大症の腺腫核出術を19世紀末から20世紀初頭にかけて完成させました。これが恥骨上式前立腺摘除術です。
次は、おそらくこのシリーズの最後です。19世紀以降の泌尿器科の手術として、内視鏡の話をします。