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2026年5月1日
新緑が目にまぶしい季節となりました。 5月は過ごしやすい一方で、急に気温が上がる日も増えてきます。
この時期、泌尿器科の現場で急増するのが「尿路結石(にょうろけっせき)」の患者さんです。 尿路結石とは、尿の中に含まれる成分が結晶化し、石のようになったものです。
この「石」が尿の通り道に詰まると、のたうち回るほどの激痛を引き起こすことがあります。 実は5月は、体がまだ暑さに慣れていないため、隠れ脱水になりやすい時期なのです。
今回は、泌尿器科専門医の視点から、尿路結石の仕組みや予防法について詳しく解説します。 この記事を読んで、痛みに怯えない健康的な初夏を過ごしましょう。
尿路結石とは、腎臓(じんぞう)で作られた石が、尿管や膀胱に流れてくる病気です。 腎臓は血液をろ過して尿を作る場所ですが、ここでカルシウムなどが固まることがあります。
この固まりが「結石」です。腎臓にあるうちは、ほとんど痛みを感じることはありません。 しかし、結石が腎臓を離れて「尿管(にょうかん)」という細い管に移動すると一変します。
尿管は非常に細いため、石が詰まると尿の流れがせき止められてしまいます。 すると、腎臓の内圧が急激に上がり、腰から背中にかけて激しい痛みが生じるのです。
この痛みは「疝痛(せんつう)」と呼ばれ、しばしば「出産の痛み」に例えられます。 痛みの他に、血尿(尿に血が混じること)や吐き気を伴うことも少なくありません。
特に5月は、冬に比べて汗をかく量が増えるため、尿が濃くなりやすい傾向にあります。 尿が濃くなると、結石の成分が飽和状態になり、石が成長しやすくなるのです。
「最近、おしっこの色が濃いな」と感じたら、それは体からの危険信号かもしれません。 まずは、自分の体の小さな変化に気づくことが、最悪の事態を防ぐ第一歩となります。
もし突然、背中に鋭い痛みを感じた場合は、我慢せずにすぐ泌尿器科を受診してください。 超音波検査(エコー)などを行えば、腎臓の腫れの有無をすぐに診断することが可能です。
尿路結石の予防において、最も重要かつ効果的なのは「十分な水分補給」です。 水分を多く摂ることで、尿の量を増やし、結石の成分を薄めて排出させることができます。
具体的には、1日に2リットル以上の尿を出すことを目標にするのが理想的と言えます。 そのためには、食事以外に2リットル以上の水を、こまめに飲むように心がけましょう。
飲むものは、水や麦茶がおすすめです。コーヒーや紅茶は「シュウ酸」を含むため注意が必要です。 シュウ酸(しゅうさん)とは、結石の主な原因となる物質で、ほうれん草などにも含まれます。
もしコーヒーや紅茶を飲む際は、ミルクを入れることでシュウ酸の吸収を抑えられます。 カルシウムがシュウ酸と結合し、便として体外に出してくれるからです。
また、塩分の摂りすぎも結石のリスクを高めます。塩分は尿中へのカルシウム排出を促します。 外食が多い方や濃い味付けを好む方は、意識的に薄味を心がけるようにしましょう。
夕食から就寝までの時間も重要です。寝る直前に食事を摂ることは避けてください。 寝ている間は尿が濃縮されるため、食後の高い尿中成分が結石を作りやすくします。
理想的には、就寝の3時間前までには夕食を済ませておくことが望ましいです。 どうしてもお腹が空いた時は、消化に良くシュウ酸の少ないものを選びましょう。
さらに、適度な運動も結石の排出を助ける効果があります。 ウォーキングなどの軽い振動は、小さな結石が尿と一緒に流れ出るのを助けてくれます。
5月の爽やかな気候の中で散歩を楽しむことは、精神面だけでなく泌尿器の健康にも良いのです。 日々の生活の中で、これら小さな工夫を積み重ねることが、大きな安心に繋がります。
尿路結石は一度かかると再発しやすい病気であり、5年以内の再発率は約50%と言われます。 そのため、過去に経験がある方はもちろん、未経験の方も定期的なチェックが重要です。
まず、トイレの際に尿の色を観察してください。無色透明から薄い黄色なら問題ありません。 茶褐色や赤っぽい色が混じっている場合は、結石によって粘膜が傷ついている可能性があります。
次に、背中や脇腹に「違和感」がないか確認しましょう。激痛になる前兆があることも多いです。 なんとなく重だるい、押すと響くような感じがする時は、結石が動き始めているかもしれません。
また、尿の回数が急に増えたり、残尿感(おしっこが残っている感じ)がある場合も注意です。 これらは、石が膀胱の近くまで降りてきて、粘膜を刺激しているサインであることがあります。
最近では、健康診断の腹部エコー検査で、無症状のうちに結石が見つかるケースも増えています。 「痛みがないから大丈夫」と放置せず、専門医と相談して経過を見守ることが大切です。
石の大きさが10ミリ以下であれば、自然に排出される可能性もありますが、それ以上は処置が必要です。
治療技術は進歩していますが、やはり一番の治療は「石を作らないこと」に他なりません。 5月の連休などで生活リズムが崩れやすい時こそ、意識的な水分補給を忘れないでください。