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2026年6月1日
新緑の美しい季節が過ぎて梅雨の時期に入ると、ジメジメとした湿気や気温の変化で体調を崩しがちです。
実は、この梅雨から夏にかけてのシーズンは、泌尿器科を受診される患者様が急増する時期でもあります。
気温が上昇すると身体の水分バランスが大きく変化し、様々な泌尿器のトラブルを引き起こしやすくなります。
特に、突然の激しい痛みを伴う病気や、日常生活に支障をきたす不快な症状をもたらす病気が多く見られます。
これからの暑い季節を健やかで快適に過ごすためには、今から正しい知識を身につけて対策を行うことが大切です。
今回のコラムでは、初夏に増える代表的な泌尿器疾患とその原因、具体的な予防法を分かりやすく解説します。
初夏に最も警戒すべき泌尿器トラブルの一つが、非常に激しい痛みを伴うことで知られる尿路結石です。
尿路結石とは、尿の中に含まれるミネラルなどの成分が結晶化し、砂利や石のようになってしまう病気です。
この石が尿の通り道である「尿路」に詰まることで、腰や背中、脇腹などに突然の激痛が走るようになります。
医療の世界では、この痛みを「疝痛(せんつう)」と呼び、三大激痛の一つに数えられるほど強力なものです。
結石ができる場所によって、腎臓結石や尿管結石、膀胱結石などと呼ばれますが、最も痛むのは尿管結石です。
細い尿管に石が挟まることで、尿の流れがせき止められ、腎臓の内圧が急激に高まるために激痛が起こります。
なぜ、これからの季節に尿路結石が増えるのかというと、それは「体内の水分不足」が密接に関係しています。
気温が上がると、私たちは自覚している以上に汗をかき、体の中から水分がどんどん失われてしまいます。
すると、腎臓で作られる尿の量が減少し、尿の中に溶け込んでいる成分の濃度が非常に濃くなってしまいます。
塩水が乾くと塩の結晶が現れるのと同じように、尿が濃くなると成分が結晶化しやすくなり、結石が作られます。
結石の主な成分はシュウ酸カルシウムと呼ばれるもので、日頃の好む食生活も発症に深く関わっています。
シュウ酸という物質は、ほうれん草やタケノコ、チョコレート、紅茶、コーヒーなどに多く含まれる成分です。
これらを過剰に摂取しすぎると、尿中のシュウ酸濃度が高まり、カルシウムと結合して結石を形成します。
激痛を未然に防ぐための最大の対策は、十分な水分をとって尿の量を増やし、尿の濃度を薄く保つことです。
また、食事の工夫として、シュウ酸を含む食品を食べる際は、カルシウムを一緒に摂ることが推奨されます。
例えば、ほうれん草にお浸しにかつお節をかけたり、コーヒーにミルクを入れたりすると効果的です。
カルシウムが腸の中でシュウ酸と結びつくことで、便として排出され、尿の中に増えるのを防いでくれます。
尿路結石と並んで、これからの季節に多くの人を悩ませる代表的な泌尿器トラブルが「膀胱炎」です。
膀胱炎とは、尿道から侵入した細菌が膀胱の中で繁殖し、膀胱の粘膜に炎症を起こしてしまう病気です。
主な症状としては、トイレに行ってもすぐに行きたくなる「頻尿」や、排尿するときのツーンとした痛みです。
また、尿が白く濁って見えたり、すっきりと出きらない「残尿感」を覚えたりすることもしばしばあります。
時には、炎症がひどくなって膀胱の粘膜から出血し、尿に血が混じる「血尿」が見られることもあります。
この膀胱炎は、圧倒的に女性に多く見られる病気であり、大人の女性の数人に1人は経験すると言われています。
なぜ女性に多いのかというと、女性の身体の構造として、尿道が約3〜4センチメートルと非常に短いためです。
さらに、尿道の出口が肛門や膣に近いため、周囲の細菌が簡単に膀胱へと侵入しやすい環境にあります。
では、なぜ梅雨から夏にかけてのこれからの時期に、この膀胱炎の発症リスクが高まってしまうのでしょうか。
大きな原因の一つは、夏場の気温上昇に伴って汗をかきやすくなり、下着の内部が蒸れてしまうことです。
湿気が多くて温かい環境は、細菌にとって絶好の繁殖場所となり、尿道の周りで菌が増殖しやすくなります。
もう一つの盲点となる原因が、室内のエアコンによる「身体の冷え」や、それによる免疫力の低下です。
冷房の効いた部屋に長時間いると、骨盤まわりの血流が悪くなり、膀胱の抵抗力が落ちて細菌に負けてしまいます。
また、暑さによる寝不足や疲労の蓄積も、身体全体の免疫力を低下させ、膀胱炎を引き起こす引き金となります。
膀胱炎を予防するためには、デリケートゾーンを清潔に保ち、細菌を繁殖させないようにすることが基本です。
通気性の高い綿素材の下着を選び、デリケートゾーンが蒸れないように意識することも予防において効果的です。
また、トイレを我慢しすぎると、膀胱の中で細菌がどんどん増殖してしまうため、早めに行くことが大切です。
もし膀胱炎の症状が現れた場合は、我慢せずに専門である泌尿器科クリニックを早めに受診してください。
放置すると、細菌が尿管をさかのぼって腎臓に達し、高熱が出る「腎盂腎炎」という重い病気になる恐れがあります。
ここまで紹介した尿路結石と膀胱炎のどちらにも共通する、最も効果的で簡単な予防法が「水分補給」です。
体内の水分を十分に満たすことは、泌尿器科の病気を未然に防ぐために、最も重要で根本的な対策となります。
水分をしっかり摂取すると、腎臓でたっぷりと尿が作られ、尿の通り道を勢いよく流れるようになります。
この十分な尿の流れこそが、結石の元となる結晶を洗い流し、尿道から侵入した細菌を外へ排出してくれます。
では、具体的にどのような方法で日々の水分を補給するのが、医学的に見て正しく効果的なのでしょうか。
まず意識したいのが、1日に摂取する水分の目標量であり、一般的には「1.5〜2リットル」が目安です。
ただし、一度にたくさんの量をまとめて飲んでも、身体に吸収されずに尿としてすぐに排出されてしまいます。
大切なのは、コップ1杯(約200ミリリットル)の水分を、1日の中で何回にも分けてこまめに飲むことです。
特に水分が不足しやすいタイミングとして、朝起きたとき、入浴の前後、そして寝る前が挙げられます。
これらの時間帯には、喉の渇きを感じていなくても、意識して必ずコップ1杯の水を飲む習慣をつけましょう。
また、水分補給として飲む「飲み物の種類」選びにも、注意しなければならない重要なポイントがあります。
最も適しているのは、余計な成分が含まれていない純粋な「水」や、カフェインを含まない「麦茶」です。
一方で、緑茶やウーロン茶、コーヒー、紅茶などには、利尿作用を持つカフェインが多く含まれています。
これらを飲むと、飲んだ量以上に尿として水分が身体の外へ出てしまい、かえって脱水を招くことがあります。
ご自身の水分状態を知る簡単な方法として、トイレに行った際に「尿の色」をセルフチェックしてみましょう。
理想的な尿の色は、透明から薄い黄色ですが、濃い黄色の場合は体内の水分が不足している危険なサインです。
尿の色が濃くなっていると気づいたら、すぐに水分を補給して、身体の乾きを潤すように対応してください。
今回は、これからの梅雨から夏にかけての季節に増える、尿路結石と膀胱炎の対策についてお話ししました。
どちらの病気も、日頃からのこまめな水分補給と、生活習慣の少しの工夫で十分に予防することが可能です。
「喉が渇いた」と感じた時点ですでに身体は脱水が始まっているため、渇きを感じる前に飲むのが鉄則です。
また、冷房による冷えを防ぐために温かい服装を心がけたり、バランスの良い食事をとることも大切です。
もし、急な激痛や、排尿時の違和感、長引く頻尿などの症状が現れたら、決して我慢をしてはいけません。
初期の段階で適切な治療を行えば、それだけ早く不快な症状を改善させ、重症化を防ぐことができます。
少しでもお身体に気になる症状があれば、いつでもお気軽に当院の泌尿器科外来までご相談ください。
正しい知識と予防法を実践して、これから迎える暑い季節を、健康で快適に笑顔で乗り切っていきましょう。