院長ブログ

Director's blog

2026年8月1日

お盆の帰省で親に伝えたい前立腺がん検診|50歳からのPSA検査を専門医が解説

お盆が近づき、ご家族と顔を合わせる機会が増える季節になりました。

健康の話題が出やすいこの時期に、ぜひ知っておいていただきたい検査があります。

それが「PSA検査」です。

前立腺がんは、日本人男性がかかるがんの中で最も多いがんです。

国立がん研究センターの統計では、2015年に胃がんや肺がんを上回って第1位となりました。

その後も、男性の罹患数トップの座を維持しています。

ただし現状は、大腸がん、肺がん、胃がんと僅差での1位です。

それでも増加のスピードは速く、今後さらに差が開くと予想されています。

一方で、早期に見つかれば非常に治りやすいがんでもあります。

その鍵を握るのが、採血だけでできるPSA検査なのです。

今回は、検査の数値の意味と、その後の流れについてお話しします。

【PSA検査とは何か|採血だけでわかる前立腺の状態】

まず「前立腺」についてご説明します。

前立腺は膀胱の下にある、男性だけが持つ栗の実ほどの臓器です。

尿道を取り囲むように位置し、精液の一部をつくる働きをしています。

「PSA」はprostate specific antigen の略で、日本語では前立腺特異抗原と呼びます。

「特異」とは「その臓器だけに関係する」という意味です。

つまり、前立腺だけがつくる特別なたんぱく質、ということになります。

このたんぱく質は、通常はごくわずかしか血液中に出てきません。

ところが前立腺にがんができると、血液中に漏れ出しやすくなります。

その量を測ることで、がんの可能性を推測できるというわけです。

検査は健康診断の採血と同じで、腕から少し血を採るだけです。

痛みも負担もほとんどなく、特別な準備も必要ありません。

前立腺がんの大きな特徴は、初期にはほとんど症状が出ないことです。

前立腺の外側にできることが多く、尿道を圧迫しないためです。

尿が出にくいなどの症状が出たときには、進行していることも少なくありません。

だからこそ、症状のないうちに調べる意味があるのです。

【数値の読み方|4.0という基準が意味すること】

PSAの基準値は、一般的に4.0 ng/mL以下とされています。

「ng/mL」は血液1ミリリットルあたりの量を表す単位です。

ただし、この数値の読み方には知っておくべき注意点があります。

まず、4.0を超えたからといって、すぐにがんとは限りません。

前立腺肥大症や前立腺炎でも、数値は上がることがあります。

激しい運動や自転車、射精のあとにも一時的に上昇します。

4.0から10.0の範囲は「グレーゾーン」と呼ばれます。

この範囲でがんが見つかる割合は、およそ4人に1人程度とされています。

つまり、多くの方はがんではないということです。

一方で、10.0を超えると、がんの可能性は明らかに高くなります。

逆に、4.0以下なら絶対に安心かというと、そうとも言えません。

数値が低くてもがんが見つかる場合があります。

そこで重要になるのが「経過を追うこと」です。

一度の数値より、年ごとの変化のほうが大切な情報になります。

たとえば1.0から2.5へと短期間で上がった場合。

基準値以内でも、上昇の速さそのものが手がかりになります。

このため、PSA検査は一度きりではなく、定期的に受けることをおすすめします。

なお、年齢によって基準を細かく分ける考え方もあります。

年齢PSA基準値(ng/mL)
50〜64歳3.0以下
65〜69歳3.5以下
70歳以上4.0以下

若い方ほど厳しめに見る、という発想です。

【検査で高値が出たら|生検までの流れと最近の進歩】

PSAが高いと言われると、多くの方が強い不安を感じられます。

しかし、いきなり大きな検査になるわけではありません。

まずは、時間をおいて再検査をすることが一般的です。

前立腺炎などによる一時的な上昇であれば、数値は下がります。

同時に、直腸診と超音波検査で前立腺の状態を確認します。

直腸診は、肛門から指を入れて前立腺の硬さや形を触れる診察です。

数十秒で終わり、恐れているほどの負担はありません。

再検査でも高値が続く場合、次に検討されるのがMRI検査です。

MRIは磁石の力で体の中を撮影する装置で、放射線は使いません。

近年、前立腺MRIの精度は大きく向上しました。

がんが疑われる部分の位置や広がりを、事前に把握できるようになっています。

そのうえで行うのが「前立腺生検」です。

生検とは、細い針で前立腺の組織を少し採り、顕微鏡で調べる検査を指します。

これががんかどうかを確定できる唯一の方法です。

以前は前立腺全体からやみくもに採取する方法が主流でした。

現在は、MRIの画像と超音波の画像を重ね合わせる方法が広まっています。

疑わしい場所を狙って採取できるため、診断の精度が上がりました。

私自身も、この画像融合による生検法の導入に早くから関わってまいりました。

そして仮にがんが見つかった場合でも、すぐ手術とは限りません。

進行がごく初期でおとなしいタイプなら、経過を見る選択肢もあります。

「監視療法」と呼ばれ、定期検査で様子を見ながら治療の時期を判断します。

治療法も手術、放射線、薬物療法と幅広く、選択肢が増えています。

早く見つかるほど、この選択肢は広がります。

まとめ

PSA検査は、採血だけで受けられる負担の少ない検査です。

50歳を過ぎたら、一度は受けておくことをおすすめします。

血縁のご家族(父・兄弟・子)に前立腺がんの方がいる場合は、40歳からの検査開始が推奨されています。

そして数値が高いと言われても、慌てないでください。

多くの方はがんではありませんし、確定までには段階を踏みます。

大切なのは、放置せずに泌尿器科で相談することです。

お盆にご家族と過ごされる際は、ぜひ健康診断の話題を出してみてください。

「今度PSAも測ってみたら」の一言が、大きな意味を持つかもしれません。

当院では、PSA検査から生検、治療のご相談まで対応しております。

どうぞお気軽にご相談ください。

Web予約
お問い合わせ
ホームページAI相談窓口