Director's blog
2021年11月20日
大分と寒い季節になってきました。コンビニでの肉まんやおでんなどの温かいメニューが恋しい季節になってきています。今回はコンビニもそうですけど、他の業種でも24時間対応事業が増えているのでこれと、前立腺がんの関係についてお話ししようと思います。
まずヒトには個人差はありますが、体温・心拍数・決夏に日内リズムがあり、昼間は交感神経がメインであり、夜間は副交感神経がメインであるという、まとまった概日リズムを形成して体調を保っています。このリズムが夜勤でずれることで体に負担がくることが予想されます。
実際の健康障害としては胃腸障害、循環器の病気、不眠やメンタルヘルス障害、持病の悪化、がんの増加などが挙げられます。
この中でがんについてです。まず女性についてです。2001年のアメリカでの大規模報告の結果です。アメリカの看護師78,562人に月3回以上の夜勤従事年数を効いたデータでは、全く夜勤のない方に比べ、夜勤従事年数1-29年で1.08倍、30年以上で1.36倍乳がんになりやすいという報告があります。(Eva S. Schernhammer, J Natl Cancer Inst. 2001 Oct 17;93(20):1563-8)
実際に国際癌研究機関であるIARCより発がん性の分類で交代制勤務は『ヒトに対しておそらく発ガン性がある』というGroup2Aに分類されています。
乳がんは女性に多く前立腺がんは男性にしかないがんですが、どちらも性ホルモンの影響を強く受けるという点が共通点の一つとしてあります。実際に固定夜勤や交替勤務で前立腺癌が増えるのかという疑問が出てきます。
この疑問に対して、JACC Studyがあります。これは2006年に発表された論文で、1988年から全国15,906人の前立腺癌に罹患するかを11年間追跡調査しています。
その結果、働く時間が昼夜決まっていない交替制勤務者では、仕事の時間が昼間に限られる日勤者にくらべて前立腺がんに3.0倍かかりやすいという結果でした。また仕事の時間が夜勤に固定されている人については日勤者にくらべ2.3倍のリスク上昇という結果が得られました。しかしこの結果は統計学的にリスクが上がるとしっかり言い切れるものではありませんでした。(Am J Epidemiol. 2006 Sep 15+164(6):549-55)
これらの原因としてはメラトニンというホルモンと関係している可能性があると言われています。メラトニンは概日リズムに密接に関与しており、分泌量が日中に少なく、暗くなると増加を指定木、深夜にピークに達して、朝までに徐々に低下しています。このメラトニンは催眠作用と抗腫瘍作用の両方を示すことが報告されています。このため、概日リズム障害が起きるとこのホルモンが低下するのが原因の一つと言われています。
ここまで前立腺癌と夜勤、交替勤務の関係について述べてきましたが、この世の中から夜勤や交替勤務をなくすことは出来ないので、ある程度は許容をしていくしかないと思います。また、前立腺癌については採血でPSAという値をみることでスクリーニング可能ですので、不安な気持ちがある方は採血してもいいと思います。