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2021年6月24日

泌尿器科の手術の歴史について その2 結石治療とヒポクラテス

今回は泌尿器科手術の歴史シリーズの2として、尿路結石、こと膀胱の中にできる膀胱結石について書きたいと思います。

膀胱結石については古く、エジプトのミイラからも見つかり、古くは紀元前4800年前のミイラからも見つかっています。このことより結石は太古からある疾患であることがわかっています。また、これらのミイラからは膀胱結石の治療を行った手術痕を会陰部(肛門と外陰部(男性では陰茎根、女性では腟口)およびその周辺)に認めます。石取りという形でもっとも行っていた地域はインド、パキスタン、イランと行った地域であり、その後ヨーロッパに伝えられています。

さてここでヒポクラテスと石取りとの話をしていきます。

まずはヒポクラテスについてです。ヒポクラテスは紀元前五世紀から前四世紀の医聖といわれる古代ギリシアの医師です。以下はヒポクラテスについてのブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より一部引用しています。

医師の家に生まれ,ギリシアだけでなく小アジアにも広く旅行して,医学を教えたり,医療を施して,当代最高の医師といわれたという程度しか明らかでない。 60~70巻からなる『ヒポクラテス全集』 Corpus Hippocraticumは彼の没後,前3世紀中にアレクサンドリアの学者によって編集されたもので,解剖学,婦人や小児の病気,食餌療法や薬物療法,外科などを扱っており,近代まで医学界に大きな影響を与えた。同全集中の『金言集』 Aphorismiは 19世紀まで教科書として使われ,医師の倫理を説いた「ヒポクラテスの誓い」は現在でも医学部の卒業式などで朗読されている。

という、医師としては知らない人はいない人なのですが、彼は石取りについて「ヒポクラテスの誓い」の中で「膀胱結石の摘出は専門家に任せ、われわれ正統派の医師はこのような無謀な治療は行わない」と言っています。医術の神であるアスクレピオス(ギリシャ神話の医神であり、アスクレピオスの杖は医療・医術の象徴です。)を祭る神聖なる医師団に加入を望む医師は、その条件として危険な結石治療には手を出さないようにと誓う必要がありました。ヒポクラテスは心臓、脳、脊髄、横隔膜、肝臓、膀胱の手術は致命的として、これらの手術を禁止していました。この考えは18世紀まで続き事となり、膀胱手術を遅らせる原因となっていきました。

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