症状

About symptoms

急性陰嚢症について

About Acute scrotum

ロゴ ポイントのまとめ

  • 急性陰嚢症とは思春期の男性に起こりやすい陰嚢の急激な疼痛をメインとする疾患です。
  • 急性陰嚢症を来す疾患で鑑別の必要なものは精巣捻転症、付属小体捻転症、精巣上体炎の3つが重要です。
  • 精巣捻転症は泌尿器科救急疾患で、緊急手術の対象になります。
  • 精巣捻転症は精巣に行く道筋がねじれることがでなります。
  • 精巣捻転症はほとんどが若年男性で起こる疾患です。
  • 発症年齢のピークは新生児期と思春期でピークは13-14歳です。
  • 精巣捻転症は夜間睡眠時、早朝起床時の発症頻度が多いです。
  • 精巣捻転症の症状は捻転した精巣の急激な激痛、場合によっては嘔吐です。
  • 精巣捻転症の検査には問診・視診・触診、検尿、採血、エコー、MRIがあります。
  • 精巣捻転症の診断で一番おこわなれるのはエコー(超音波)検査であり、血流の低下を見ます。
  • 精巣捻転症では発症から手術開始まで12時間以内であれば精巣の温存率が高くなります。
  • 精巣捻転症の治療は用手的整復と手術です。
  • 用手的整復は泌尿器科専門医が行うようにしてください。
  • 用手的整復後も手術が必要になります。
  • 手術は精巣捻転症解除後に血流の回復が良い場合には精巣固定、悪い場合には精巣摘出をします。
  • 診察で判断が困難である場合には試験切開を勧めることが多いです。

ロゴ 急性陰嚢症について

急性陰嚢症とは思春期の男性に起こりやすい陰嚢の急激な疼痛をメインとする疾患です。

陰嚢に痛みを来す疾患は精巣捻転症、付属小体捻転症、急性精巣上体炎、陰嚢外傷、陰嚢水腫、鼠径へルニア、特発性陰嚢浮腫、ヘノッホ・シェーライン紫斑病、ムンプス精巣炎、陰嚢蜂窩織炎、精巣腫瘍、精巣梗塞、精索静脈瘤、尿管結石があります。

ここで急性陰嚢症を来す疾患で鑑別の必要なものは精巣捻転症、付属小体捻転症、精巣上体炎の3つが重要です。
なぜ3つなのかというとこの中で泌尿器科の救急疾患となるのは精巣捻転症です。これについては適切な治療を行わないと精巣を失う原因となります。このためこれを見逃さないのが重要になります。

このため精巣捻転症をメインとして少し付属小体捻転症について書いて行きます。精巣上体炎は当院の症状診断のページの「泌尿器の感染症、炎症性疾患」にありますので参考にしてください。

ロゴ 精巣捻転症について

精巣は胎児期にはお腹の中にあります。これが出生に向かい現在の精巣の位置まで降りてきます。このため、陰嚢から腹部へと向かう道があり、この中に精巣の血管、精子を運ぶ精管が通っています。この部位が何らかの理由でねじれるのが精巣捻転症です。

精巣への血管が入っているので、この部位がねじれて、しばらく放置すると精巣への血流がなくなり、長時間になると精巣が壊死します。

ロゴ 付属小体捻転症について

精巣には精子の通り道である精巣上体がついている構造になっています。
これらに、イボのようなものができていることが多く、これらは場所により、精巣垂、精巣上体垂といいます。これらは特に役に立つものではないです。なくてもいいものなのですが、精巣垂は92%、精巣上体垂は34%で存在しています。これらが捻転するのが付属小体捻転症です。これらも陰嚢全体の痛みや炎症を来すため、精巣捻転症との鑑別が必要になります。

ロゴ 精巣捻転症の疫学

精巣捻転症の発症年齢は若年男性がほぼメインです。アメリカのデータでは1-25歳の発症頻度は10万人あたり4.5人と言われています。

年齢では新生児期と思春期に多く思春期に60-70%発生します。ピークは13-14歳です。高齢になると稀になります。

一日のうちで起こりやすい時間帯があります。精巣捻転症は夜間睡眠時、早朝起床時の発症頻度が多く昼間では少ないです。

精巣は左右1個ずつありますが、起こりやすいのは左とされており、右の2-3倍多いです。付属小体捻転症の発症のピークは9-11歳で起こりやすい時間帯は昼間の活動時です。左右での発症頻度の差はありません。

ロゴ 精巣捻転症の症状

疼痛が非常に強く、急激に起きます。何時何分に起こったのかわかるくらい急激です。さらに身動きできないくらいに強く、嘔吐を伴うこともあります。

ただし、この症状が軽いこともあります。付属小体捻転症は症状が捻転に比べて軽いことが多いのですが、すごく症状が強い例もあり、両者の鑑別が難しいことがあります。

精巣捻転症ではなられた方に詳しくお話を聞くと、過去に短時間だけの疼痛を認めたという方が2~6割おられます。

発熱や排尿時の痛みなどがある場合には精巣上体炎の可能性が高くなります。

ロゴ 精巣捻転症の検査

問診・視診・触診、検尿、採血、エコー、MRIが挙げられます。一つずつ説明します。

問診・視診・触診

まずは問診にて過去にこのようなことがあったのか。発症は急激なのか、嘔吐があったのか、発症時間はいつなのかなどを聞いていきます。次に視診ですが、陰嚢の皮膚に青い点を認めることがあります。これはblue dot signと言われ付属小体捻転症の所見です、精巣捻転症は視診では特に異常は認めません。続き触診ですが、精巣が陰嚢より上に上がっているのは精巣捻転症の可能性があります。さらに精巣挙筋反射というものがあります。大腿の内側を刺激すると精巣挙筋の反射で睾丸が挙上します。 これが精巣挙筋反射です。正常で認めるものなのですが、これが消失している場合には精巣捻転症の可能性があります。Prehn徴候というものがあるのですが、これは痛い精巣を持ち上げても痛みが変わらないというもので、昔は急性陰嚢症の鑑別にされていたのですが、最近ではあまり行いません。

精巣の大きさは発症の早期では患側で大きくなっていることがあります。他の付属小体捻転症や精巣上体の早期は精巣の大きさは大きくなっていないことが多いです。ただはっきりしないことも多いです。

検尿

検尿は精巣上体炎の鑑別に重要になります。ここで膿尿を認める場合にはほぼ精巣上体炎です。

採血

炎症を意味する白血球、CRPの上昇は精巣上体炎で認めることが多いです。

エコー(超音波検査)

精巣捻転症のメインで行われる検査です。この検査にて精巣に血流がなくなっている場合には精巣捻転症の可能性が強くなります。ただこの血流は非常にわかりにくいことが多々あり、診断に苦慮することが多いです。他にエコーの所見でwhirlpool signというものがあります。捻転している部位がエコーで渦巻きやカタツムリのようにみえるもので、これが確認できたら、かなり強く捻転を疑います。

MRI

造影剤を使ったMRIは精巣の血流の低下を直接確認できるのでかなり有用な検査なのですが、緊急でのMRIを行える施設はかなり限定されており、あまり行われることはないと思います。

ロゴ 精巣捻転症の治療

精巣捻転症は正しく治療をしなければ精巣を失う可能性があり、直ちに治療をすることが重要です。これについては時間が重要であり、捻転発生から手術までの時間が12時間以内であれば80%近い確率で精巣温存が可能です。12時間を経過すると温存率は悪くなり24時間を経過すると精巣温存ができるのは20%以下になってしまいます。
その上で精巣捻転症の治療は用手的整復と手術があります。

用手的整復

これは単純にねじれを手で戻す方法です。捻転は足側から見て内側に捻転していることが多いため、外側に回します。成功すれば直ちに痛みがなくなります。ただし、まだ捻転している可能性があること、今後再度捻転が起こる可能性があるので、どちらにせよ手術が必要になります。この治療は泌尿器科専門医のみが行うようにしてください。なれていない方は失敗すると悪化するので絶対にしないでください。

手術

手術ではまず精巣捻転症解除を行い、精巣への血流の改善を確認します。これで血流回復がいい場合には精巣固定術を行います。血流回復が悪ければ残念ながら精巣摘出術とします。

精巣固定術は精巣内にしっかりと精巣を固定して2度と捻転しないようにすることです。
そしてこの上で、精巣捻転症では片方の精巣で捻転を起こした場合にはもう一方も正常にみえても22%捻転があったという報告があり、反対側の固定術も同時に行うことが勧められています。

他の付属小体捻転症の治療は鎮痛剤投与、安静治療を行い、疼痛が長く続く場合には捻転した付属小体の切除を行います。精巣上体炎は抗生剤治療になります。

ただ、鑑別が困難である場合には確定診断をするためにも試験切開を勧めることが多いです。泌尿器科緊急疾患ですので、急激な陰嚢の痛みについて身動きできないようでしたら、すぐに泌尿器科に行ってください。夜間は救急車もやむを得ないと思います。
この際の注意点ですが、緊急手術となる可能性が高いため、全身麻酔に備えて、飲食は遠慮するようにしておいてください。

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